第3話 義母と妹の関係性

 数日後、何となく家に帰ることにした。放課後、晴と会った後の夜、二十三時頃に家に着く。


 「お母さん、ごめんなさい。陽菜が悪いから。だから、もうやめて」


 「口答えするんじゃないわよ。あんたなんて産まなきゃ良かったわ」


 またやっている。玄関の方まで声が響いている。これでよく、苦情が来ないものだな。


 「おい、くそ婆。玄関の方まで聞こえてんぞ。苦情来ても知らねえからな。それにてめえ、誰の金で生活出来てると思ってんだよ。俺のくそ親父のお陰だろうがよ」


 呆れたように義母に声をかけると義母は小さく溜息をつく。


 「何よ、文句があるなら出て行きなさいよ」


 「てか、てめえが出てけよ。ここはてめえの城じゃねえんだぞ。俺のくそ親父がここの家賃払ってんだから」


 義母は俺の事を睨むと可愛くない子と言った。


 「別にてめえに可愛いだなんて思われたくねえんだよ」


 「私はこの子の母親でここは私の旦那様が借りてる部屋よ。私が出て行くだなんて出来るはずがないでしょ」


 久々に帰ってきてもいつも義母と喧嘩をする。


 「お兄ちゃん、陽菜はね、平気だよ。陽菜が叩かれるのは、陽菜が悪い事をするからだもん」


 そしていつもそれを仲裁するように陽菜がそう言ってくる。


 「ああ、もう良い。出てくよ。出て行けば気が済むんだろ。おい、陽菜。てめえも来い」


 「え、でも、お兄ちゃん。陽菜、明日も学校が」


 今の心配より明日の心配か。


 「うるせえな。じゃ、てめえはまたこのくそ婆に殴られても良いって言うのかよ」


 「えっと、その。陽菜は」


 義母のせいか陽菜は昔っから自分の考えを言う時に言葉に詰まる。


 「ああ、くそ。なら、制服と、明日の教科書、準備して来りゃあ良いだろ」


 陽菜は首を縦に振ると自分の部屋に向かった。


 「誰が陽菜まで連れて出て行けと行ったの。お母さんは、仁、貴方が出ていけば良いと言ったのよ」


 義母はそう言うと眉間にしわを寄せて睨み付けてくる。


 「うるせえな。黙っとけよ。死ね」


 「母親に向かって何、その口の利き方は」


 怒鳴りつけてくる義母に昔は恐怖感を覚えていた。呼びたくないのに機嫌を取りたくてお義母さんと呼んだこともあった。だけど今は、怖くもなく、恐怖感なんて何処にもなかった。それは、殺ろうと思えばいつでも殺せると思っているからだ。


 「お兄ちゃん」


 「行くぞ。胸くそ悪い」


 陽菜の手を引き止めてくる義母を振りほどき家を出る。


 「お兄ちゃん、何処に行くの?」


 陽菜が少し不安そうに聞いてくる。自分一人なら街の隅で野宿しても良いのだが、陽菜が居るからそれは出来ない。


 巧の家なら両親は出張が多いとかで滅多に親が帰ってこない。仕方ない、巧の家に行くか。


 「黙って着いて来りゃ良いんだよ」


 「わかった」


 手を繫いだまま巧の家に向かい呼び鈴を押した。


 「はい、どちらって、どうしたんだよ、二人して」


 「悪い、今日泊めてくれ」


 巧が扉を開けて中に入れてくれた。中に入り自分は適当に腰を下ろした。陽菜は俺の側を離れようとはせず後ろに隠れるように座った。


 「うぜえな、離れて座れよ」


 「そんな事言うなよ。陽菜ちゃんだって本当はここには来たくなかったはずだぞ」


 ここに泊めて貰うのは何度もあった。俺が久しぶりに家に帰る度、義母に出て行きなさいと言われ陽菜を連れて巧の家に行く。それでも陽菜が巧に慣れないのは彼女が中学一年の頃に三年の先輩に犯されかけた事があるからだろう。それから陽菜は俺以外の男性恐怖症になった。もちろんそのことは巧も知っている。


ー続くー

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