神様が仕組んだことには

ハスノ アカツキ

神様が仕組んだことには

「先生」


 カズコ先生が振り向くと、ナナが不安そうな顔で立っていた。

「どうしたの? 何かあった?」

 カズコ先生の声に、ナナは小さく首を横に振る。

「何かあったわけじゃないんですけど、悩みがあるんです」

 カズコ先生は少し驚いた。

 周りから好かれるナナにも人知れず悩みがあるのか、と意外だったのだ。


「私、ラッキー7とか七福神とか幸運のイメージが持たれているんですけど、本当は何もないんです。むしろアンラッキー7だと自分では思っていて」

「アンラッキー7?」


 カズコ先生の言葉にナナは小さく頷く。


「私はクラスメイト10人の中で、何をやってもダメなんです」

 ナナは大きく溜め息を吐いた。


「イチは皆の意見を尊重してくれるし」

 1は誰とかけ算をしても、必ず答えが相手の数字になる。


「ニ、ヨン、ゴ、ハチは名家の出身だし」

 2と5は10の約数、4は25とかければ100になり、8は125とかければ1000になる。


「レイは自分の世界を持っていて、皆を虜にしちゃうし」

 0は誰とかけ算しても、必ず答えを0にしてしまう。


「他の皆もエン先輩と仲が良いんです」

 3、6、9はそれぞれ円を綺麗に分けることができる。


「皆と違って、私は名家の生まれでもないし、エン先輩とも仲が良くなくて」

 7は70や700など、10や100や1000よりはキリが良くない数字にしかならない。

 また、7人でケーキを分ける場合は中心の角度に小数点以下が発生してしまう。


「それだけじゃないんです。私が小数委員長をやったとき、なかなか答えを出せなくて他の皆より時間がかかっちゃって」

 7を分母にした分数を小数に直すと循環小数になる。3、6、9も循環小数にはなるがシンプルな循環小数だ。


「おまけに親戚も影が薄いというか、見付けにくいんです」

 7は倍数も見付けにくい。他の数字は割り算をする前に判断がつきやすいのだが、7は実際に割ってしまった方が早い。


「数字としても図形としても何もかも上手くいかないんです。クラスメイトの中で私1人だけが中途半端なんて、それこそアンラッキーじゃないですか? 両方とも上手くいくクラスメイトもいるのに、まるで神様が仕組んだとしか思えません」


「確かに数学の分野は苦手かもしれないわね。私たち数字にとって、それは辛いわよね」


 カズコ先生の言葉にナナは項垂れてしまった。


「でも他の分野にナナは必要よ。俳句・短歌もナナが重要だし、酸性かアルカリ性かを示すpHもナナしか中性の役割はできない。カレンダーをまとめるのも得意だと思うわ」


 ナナは、はっと先生の顔を見つめた。

「ナナにしかできない大切な役割よ。もしかすると、それこそ神様が仕組んだのかもしれないわね」

 カズコ先生がウインクすると、ナナは大きく頷いた。

「そうですよね。先生に相談して良かった! ありがとうございます、先生」

 ナナは嬉しそうな顔で帰っていった。

 こうして、ナナは自分だけの大切な役割を、そして、7としての幸運のイメージを受け入れることができましたとさ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神様が仕組んだことには ハスノ アカツキ @shefiroth7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ