第5話 物語は始まってくる
主人公視点
校長先生の長ったるい話を聞き流しながらも考えるのは隣の席の若葉さんのことばかりだ。
「流石に初対面で馴れ馴れしかったのだろうか?」とか「次はどうやって話しかけよう?(いや話しかけても大丈夫なのか?)」とか「とりあえず謝った方がいいよな?」などである。
あの後、ジュースを買いに自販機まで行ったはいいものの何かを飲む気にはならず少し時間が経ってから教室に戻ると、他の生徒達も教室に入って来ていて中には同じ中学だったのかそれとも早速友達を見つけたのか複数人で話している人達もいた。
気まずい空気のまま、また同じ席に座って居るとそのうち時間が経って先生が入ってきてそのまま入学式開始の時間になった。
教室では何故か俺に話しかけてくれるクラスメイトがいなかったのだが、やっぱり俺のような根暗な奴には声がかけずらかったのだろうか?
「皆さんご入学おめでとうございます」
そんな事を考えていると不意に聞き覚えのある人の声が聴こえてきて壇上の方を見る。
そこには見覚えのある人の顔が見えた。長く綺麗な白い髪に青い瞳、堂々とスピーチする彼女の姿にはもはや神々しさすら感じる。
彼女は冬ねぇ、名前は
実はこの学校に通う事になったのは彼女がすすめてきたことによる所が大きい。去年の秋頃にまだ高校を決めかねていると、たまたま泊まりに来ていた冬ねぇに相談すると目を輝かせて
「うちに来なさい」
と真顔で言われた。それはもう熱心な勧誘で、俺が元々偏差値の高い学校に行きたいのもあってここに入学することにした。
最初、冬ねぇは冬ねぇの家に居候させるつもりだったらしいのだが俺はそれを断ってアパートを借りて一人暮らしすることにした。
理由は冬ねぇは暗くなった俺が余程心配なのか、かなり俺に構って来るのだ。家は結構離れてるのにも関わらず大きい休みやたまに土日など、結構会いに来るのだ。
ありがたいのはそうなんだが正直これから毎日は流石に鬱陶しいと思ってしまったので冬ねぇに内緒でアパートを借りた。
いつも会っていた時とは違う堂々とした冬ねぇを見ていたりする内に入学式は終わりホームルームになってしまった。
「はーい今から貴方達には自己紹介してもらうわよ。自分の名前と趣味特技、後は入りたい部活かなんかを言ってくださいね〜無かったら帰宅部でもいいですよー」
担任の
自己紹介は以外とすんなり進んだ。このクラスは比較的に個性が強い人は数人を除いていなかった。
特に個性が強いと感じたのは、
「僕の名前は
という感じに苗字に負けないくらいの正に王子様のような金髪イケメンの人や
「私の名前は
とこちらは他の女子生徒比べてかなりの美少女の人がいた。白い肌に若葉さんとは違う紫がかった長い黒髪を編み込みハーフアップにした上品な感じの人だ。どこかのお嬢様とかなんだろうか?
他には背が小学生なんじゃないのかというくらい低い女子生徒がいた。彼女は
「あたしは
といった感じに自己紹介していたが、黄色のショートボブに大きなピンク色の瞳という背丈だけではない幼い容姿につんつんした態度がなんとも微笑ましい感じがしていた。
そんな中俺はというと、とりあえず無難な感じにすればいいと考えて、
「俺の名前は星守 晴人、趣味は映画鑑賞と読書で怪盗が出てくる探偵小説が好きです。今のところは部活に入るかは決めてません。よろしくお願いします。」
と言った。
若葉さんの場合は
「若葉 花咲音です。趣味はサイクリングで入りたい部活はないです。以上です。」
とかなり簡潔で淡白な自己紹介をしていた。若葉さんも近くで見ればちゃんと美少女だとわかるのだが、若干長い前髪で顔が見えずらいせいか、はたまたさっき言っていた人達がインパクト画強いのかあまり他の人達の視線は感じなかった。
しかし趣味がサイクリングとはアウトドアがかなり好きなのだろうか?
(なんか以外だな……あれ?若葉さんとは会ったばかりなのになんで以外って思ったんだろう……)
(そんな事はともかく、これは話題作りに使えるのでは?)
俺がそんなことを考えていると今日は授業はないので明日の持ち物等の連絡などを聞いてホームルームは終わってしまった。
俺は若葉さんとの1件でこちらから積極的にアクションするのは悪手だということを学んだので、友達は欲しいが自分からは極力話しかけず相手からの会話を待つことにしたのだ。
とりあえず今日は新しい人間関係を作る勇気が出なかったので、若葉さんとの友好関係を築くためアウトドアの雑誌でも買いに行こうかな、と心の中でさっさと帰る言い訳をしつつ帰る準備を始めた。
後今日は行かないといけない場所もあるし……
おそらく俺のことが嫌いな隣のクラスメイトが俺の初恋の人だという事を俺はまだ知らない。 黯輪ねる。 @curowa_neru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。おそらく俺のことが嫌いな隣のクラスメイトが俺の初恋の人だという事を俺はまだ知らない。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます