第3話 勘違いの始まり
(これは完全に嫌われてるーー??!!)
俺は内心かなりショックだった。いったい何が行けなかったのだろうか?初対面でいきなり異性に話しかけるナンパ野郎とか思われたのかな?
それとも潔癖症か男性恐怖症とかで肩を叩いたのがなんか琴線に触れちゃったとか?
それとも握手とかやっぱり今どきはやんないのか?もしかしてあれか?顔が生理的に無理とか言うやつ?!だとしたらめっちゃへこむな……
でも返事はしてもらえたらし、ただの人見知りなのかもしれない。また次の機会に話そう。出会ったばかりなのに流石に次の席替えまで嫌われたままとか学校生活に支障を来たしかねない。
俺は財布を鞄から取り出しジュースを買ってくる体でこの少し気まずい二人きりという状況を脱出した。
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ヒロイン視点
この学校は私が住んでいる住宅街の直ぐ隣りにある。偏差値は高いが家との距離が近いのはほんと助かるのでなんとか勉強を頑張って入学することが出来ました。
偏差値の高い高校に入れて浮かれていた私は、いつもは寝ているであろう時間に起きていました。
ゆっくりと朝食やメイクなどをして通学準備を進めます。
そして早速学校に行って見ることにしたのです。
制服の着こなしが間違っていないか姿見の前で30分くらいチェックしてから、お気に入りの所々に猫要素のある灰色のオーバーサイズのパーカーを制服の上から着て家を出ました。
この学校は校則が緩いのも特徴で入学式なのに私は結構緩い格好をしていますが全然校則の範囲内です。
少し歩くとこの街のちょっとした名所の学校前の桜並木が見えます。毎年この季節になると休みの日などは花見をしにいらっしゃる方もいるくらいです。
特に校門前の桜は樹齢200年越えのとても大きな桜で満開に咲いたその迫力はとてつもないものがあります。桜にはちょっとした想い入れがあるのでこうも立派に咲いているとなんだか誇らしくなります。
ふと周りを見ると少し遠くに男子生徒が見えます。何やら道端の猫を見ているようです。私も猫は好きです。
桜を十分堪能した私はさっそく校舎に入って行きます。
昇降口にクラス分けの紙が貼ってあったのでそれを見て自分のクラスを確認します。
(うーん、あ!あった、1年2組か〜ていうか全然生徒がいないんだけど、もしかして一番乗り!?)
「あらー?新入生の子?あなたずいぶん早く来たんだねぇ」
階段を上る途中女の人に声を掛けられた。多分先生でしょう。
「はいっ!なんだか待ちきれなくって……」
「あら〜、初々しい感じ可愛いわぁ、あっわかってると思うけど1年生は一番上よ、じゃあまた入学式でね」
そういうと下に向かって先生は降りて行ってしまいました。
私は気を取り直して1年2組のクラスに向かった。やはりまだ誰もおらず、私は自分の席を確認する。
一番最後だった。まぁ苗字がわ行なので大体一番最後なのでなんとなくそうなんじゃないかとは思っていたが。
席に座って、音楽を聴くためにスマホにイヤホンを挿した。そして3階の窓から街の景色を眺める。こっちの方角には確かあの病院があったはずだ。
私の想い人、星守 晴人くん。彼との想い出の全てがあの病院の私の病室という箱に詰まっていた。しかし今はもう他の患者のために使われていることでだろう。
でも大丈夫、私はちゃんと覚えています。彼の私に向けてくれた声や表情、そして彼が楽しそうな笑顔で語る読書感想会での会話も全て。
形に遺るものは何も残っていないが、魂に刻まれた想い出は色褪せることはあっても決して消えることはない。
だからこそ私は前世の記憶、涼風 桜としての記憶を取り戻すことが出来たのだろう。
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