富恍は不幸

関口 ジュリエッタ

第1話 また七の付く日がやってきた……。

 早朝気持ちの良い朝だったので、幸の薄そうな見た目の青年 字見富恍じみふこうは散歩に出掛けるのだが、そこで悲劇が起きてしまう。

 今、富恍は公園にあるトイレの大便器室の便器に腰を下ろして腕を組み、難しそうな表情を浮かべていた。

 理由はこの中にトイレットペーパーが無かったからだ。


(そう言えば今日は七日だったな……)


 実は富恍は七の付く日は必ず不幸な出来事が起きてしまう。

 先月は図書館で本を読んでいたとき、いきなり車が突っ込んできて、車の下敷きになってしまったり、海辺で散歩しているときも、砂浜に不発弾があるのに気づかす目の前で爆発したりなど、不運な出来事ばかり起きているのだ。

 そして今回は富恍が使用している大便器室にトイレットペーパーが切れていた。

 とりあえず、ここのトイレの大便器室は三つあるので壁をよじ登って確認をするが両隣ともトイレットペーパーは切れているので、再び便座に腰を下ろす。

 このまま時間を過ぎても解決しないため、何か策を考えてみてはいるが一向に良い案が思いつかない。

 仕方なくここは富恍の妹 朱里あかりを呼んでトイレットペーパーを持ってきてもらうよう連絡をすることにした。

 ポケットからスマホを取り出して妹の朱里に連絡をする。


『もしもし、どうしたのお兄ちゃん』

「実は深刻な話しがあるんだ」

『なに、どうした…………』

「――もしもし? おーい!」


 急に妹の声が途絶えたのでスマホの画面を確認すると真っ暗になっていた。充電切れだ。

 最終手段が無くなった富恍は、誰かがここのトイレに入ってきた人に助けをお求めようと考えた。

 ここは人気が少なく、あまりトイレを使用する人など来ない場所なので助けがくる確率は低い。

 しばらく辛抱強く待っていると入り口から誰かが入って来た。

 チャンスと思い扉を開けたが、何かに気づいた不幸は直ぐに扉を閉めた。


(……どうして小便器が無いんだ?)


 男子トイレなら必ずある小便器が、ここのトイレには設置されていない。

 そう、ここは男子トイレではなくだった。

 額に脂汗を流しながら足をブルブル震わせた。

 一歩間違えれば変質者に勘違いされ通報を受けてしまう恐れがあるため、助けを求めることは不可能。

 左隣の大便器室に入ろうとする女性は紙がないと知り、トイレから去って行った。

 また絶望の時間が始まる。これ以上ここにいるのも我慢の限界、意を決してお尻に便が付いているにもかかわらず、富恍はパンツを上げようとした次の瞬間、便器が大爆発を起こし、辺り一帯が爆風に巻き込まれた。

 富恍は爆発に巻き込まれて大やけどを負い、近所住民が駆けつけ、救急車に運ばれるのであった。

 後日、爆発の原因は公園のトイレは水洗式トイレではなくて、汲み取り式トイレのためメタンガスが充満しており、何かの拍子に爆発をしてしまったという。


 病室で消防隊からその説明を受けた富恍は、しばらく恥ずかしさのあまり精神が弱ってしまうのであった。

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