7の文字と黒き追憶

孤兎葉野 あや

7の文字と黒き追憶

「これからやることを、改めて整理しておきましょう。

 そこの山で幽霊騒ぎがあったから、私達で確認した結果、

 悪霊の類で、放置しておくのは危険と全員が判断。ここまではいいわね。」

場を仕切る少女の言葉に、残る二人もうなずく。


「まずは私が除霊を試みるわ。本来、私の仕事みたいなものだしね。」

「了解! 何かあったら、私達もすぐ助けに入るから。」

「サポートはお任せください。」

もう一人の少女と、やや姿が透き通った存在――その使い魔というべき存在も、

ぐっと手を握った。


「それじゃあ、山に入る前に除霊の札を確認して・・・と。」

「・・・ミソノさん、それも七つ単位なのですか?」


「うん? 確かにそうね。今回は汎用的な札を入れてるけど、

 火とか水とかの属性別に揃える時に便利で・・・

 というか、『それも』って、他にも何かあるの?」

「この世界の休日が七日単位ですし、らっきーせぶん?みたいな言葉があったり、

 アカリのげーむ?の中にあった、絵柄を揃える遊技台にも7の文字が・・・」


「ああ・・・七福神、なんかもそうよね。

 さっき出てきたのとは別宗教由来だと思うけど、

 昔から好まれることが多い数字ってところかしら。」

「ラッキー7って言い方は、こっちの世界の競技が由来みたいだね。

 人気が高い種目だから、いつの間にか広まってたんだと思う。」

「ふむふむ・・・勉強になります。」

三人の中で唯一、世間の知識に疎い使い魔の少女に、

二人がいくつかのことを教えつつ、山の中へと踏み込んでいった。



「・・・来ます!」

やがて、使い魔の少女が真っ先に声を上げ、

残る二人もすぐに体勢を整える。


「向こうから積極的に来るなんて、

 良い餌が来てラッキー、とか思ってるのかな。」

「だったら、そんなもの今すぐにアンラッキーに変えてやるわ!」

少女が取り出した札が、現れた悪霊へと放たれてゆく。

やがて七枚目の札が張り付いた時、それは完全に姿を消した。


「よし・・・除霊完了ね。」

「うん、周りにも残ってないよね、ソフィア。」

「はい! 気配は完全に消えています。」


「そういえば、ちょうど七枚で終わらせたのですね。

 これがらっきー・・・いや、あんらっきーせぶん?」

「ちょっ・・・今それを蒸し返すの?」


「・・・ミソノさん、急に顔色が?」

「うん・・・? ああ、思い出した。小さい頃、二人でそんな遊びをしたよね。

 子供向け番組の真似っこで、幸運戦隊ラッキー7とか、敵対する組織がアンラッキー7とか。」

「だからそれを蒸し返すなああ・・・!」

呼び覚まされた黒歴史の記憶に、少女が頭を抱えて座り込んだ。


「まあまあ、無事に除霊も終わったし、帰ろうか。」

「はい、何事も終わったのでらっきー、ということでしょうか。」

「うんうん、その使い方で合ってるよ。」

「今現在で言えば、私の心の中はアンラッキーなんだけど・・・」

夜の山道に、三人の楽し気な声が響いた。・・・一部を除いて。

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7の文字と黒き追憶 孤兎葉野 あや @mizumori_aya

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