Mr.ラッキー7

大道寺司

第1話

「さぁ、始まりました。第44回異能力大会! 最強の異能力者を決めるこの大会、栄冠を手にするのは誰だ!?」


 司会の女性の言葉に会場にいる観客が盛り上がる。


「それでは第1回戦! まずはこの選手! 現在7連覇中! 8連覇をかけてこの男がまたも参戦! 《Mr.ラッキー7ミスターラッキーセブン幸運しあわせはこぶ!」


 俺は名前を呼ばれてスタジアムに入る。


「対するはこの選手! 今大会が初参戦! 期待のルーキー、裏目順うらめじゅん!」


「よろしくお願いします」


 裏目はスタジアムに入ると俺に挨拶する。

 ここはきちんと返すのが礼儀だろう。


「よろしく頼む。手加減はできないがな」


「望むところです」


「それでは試合開始!」


 司会の合図で裏目は身構える。

 俺はいつも通り異能力《ラッキー7ラッキーセブン》を発動。

 俺の頭上にスロットが現れ、3つのリールがくるくると回転する。相手から見て左側から順に停止し、3つの数字が決定する。


「2、1、7か」


 異能力《ラッキー7ラッキーセブン》の能力はスロットの結果の3つの数字によって異なる効果を発揮する。

 ランダムな上、プラスの効果もマイナスの効果もあるが、多種多様な効果を使えるのがこの能力の強みだ。

 数字毎の効果は一部の例外を除いて、様々な要素によって日替わりで変化する。

 もちろん、試合前に数字の効果はある程度リサーチ済み。今日の217番の効果は腕力の強化だ。


「もういっちょ」


 俺は再びスロットを回す。

 結果は5、5、5。今日の555番の効果は移動速度上昇だ。


「じゃ、そろそろいきますか」


 俺は人間が通常出せるよりも速い速度で裏目に近づき、強烈なパンチを繰り出す。


「!? うわぁぁぁ!」


 裏目は急に高速で動き出した俺に驚いていたが、身構えていただけあってギリギリガードが間に合った。

 しかし、強烈なパンチの威力に吹き飛ばされてしまう。

 このままぶん殴り続ければ俺の勝ちだ。


「いてて。でも、これで僕の勝ちだ」


 吹き飛ばされて倒れていた裏目は不敵な笑みを浮かべながら立ち上がり、急に勝利を宣言した。


「どうした? 気でも狂ったか?」


「いいえ。僕の異能力の発動条件は相手に触れること。それが今、達成されたんです」


「なに?」


 突然、スロットが勝手に回り始める。


「バカな! 俺の意思に反してスロットが回るなどあり得ない!」


「どうやらあなたの異能は運が良くなるという効果もあるみたいですね。それが逆転して、不運でスロットが誤作動を起こした」


「逆転だと?」


「僕の異能力は《逆転リバース》。あなたの異能力《ラッキー7ラッキーセブン》を逆転させました。いわば、今のあなたの異能力は《アンラッキー7アンラッキーセブン》!」


 スロットの数字が決定する。

 8、9、8。今日の898番は相手が爆発する効果だが、爆発したのは俺だった。


「ぐわぁぁぁ!!!」


 俺は黒焦げになりながらもなんとか耐えた。


「大ダメージですね。自分がくらっていたかと思うとゾッとします」


「クソっ」


 そしてまたスロットは無情にも回り始める。


「あぁ、やめろ! スロットが勝手に!」


「もう諦めてください。7連覇を成し遂げたあなたは強い。これまでの勝率は100%。ですがその強さが逆転した今、あなたの勝率は0%です!」


 スロットの結果は7、7、7。

 効果はいつでも変わらない、確実な勝利。

 だが、今この瞬間だけは逆の効果を持つ。


「なんという大番狂わせ! 不敗神話、ここに終焉!!」

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Mr.ラッキー7 大道寺司 @kzr_

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