第2話 神様とご対面

目を覚ますと、白い空間にいた。水面があたり一面に広がっているのに何故か自分は立てている。



一瞬でこれは夢だなと思った。でも、夢の中なのに自分の意識はあるのかと不思議に思っていた矢先、背後からジジイのような声をしたおっさんに呼びかけられた。



「ふふぉっっwふぉっふひっw」



「めっちゃ気持ち悪い喋り方!誰だあんた!?」



「わしはお前さんの心に住んどるいわゆる神じゃよ」



「うわすっごいベタ!…ん?お前さんのこころって?」



「そのまんまの意味じゃよ。お前さんが神社で一人缶お参りしてた時コケてから扉にそのままズッコケて行ったじゃろ?あの頃から間違ってお前さんの所に入っておったんじゃよ」



高校生の頃に一回だけ有名な神社に行ってから幼馴染と主人公の仲がこれ以上良くなりませんようになどと不健全なお願いをして、そのバチなのか、祈りを終えて帰ろうとした瞬間に足元のよく分からない紐に引っかかりそのまま扉につっこんだとこがあった。



「あれはじゃな、実はお前さんがあんまりにも本気で不健全なお願いだったからちょっと罰を与えようと思ったんじゃよ、それがしかしお前さんの中にまで入ってしまうとはおもはなんだ」



そしてまた「ふふぉっw」などと変な笑い方を神様はこちらに視線を向ける。




「お前さんの心が改心するまで出てこんつもりじゃったが、まさかここまで時間が掛かるとはなぁ」



「なんかすいません…しかし、今更出てきてどうしようっていうんですか?もう僕は取り返しのつかない所まできてしまっているし。まさか神様がなんとかしてくれるっていうんじゃ無いでしょうね?」



半ば冗談、しかし少しだけ期待をしながら諦めた表情で自嘲気味に笑う彼を見て神様はニヤリと笑う。




「そのまさかじゃよ、お前さんがその後悔している過去とやらをやり直しさせてやるぞい、ついでにお前さんにちょっとした特殊能力もくれてやるそい。ただし条件付きじゃがなふふぉっwひひっw」



「マジか!…ん?待て、条件付き?」



「そうじゃ。その条件はお前さんの幼馴染の身に起きるトラブルをお前さんが対処すること、そしてお前さんは幼馴染と付き合ってはいけぬことじゃ」



「は!?いや、ちょっと待ってくれ!トラブル?何だそれ?それになんでアイツと付き合っちゃいけない!?そのためにやり直しをさせてくれるんじゃないのか?」



「ふふぉっふぉ。トラブルについてはお主の過去を振り返ってみればわかるじゃろ?お前さんの幼馴染がお前さんで言うところの“主人公“と付き合うことになった要因でもあるのじゃから」




確かに、振り返ってみれば高校時代、俺たちのクラスは色々とトラブルがあった。というか、絶対誰かが意図的に仕掛けているとしか思えないアクシデントが文化祭や、運動会など色々な場面で多かったのだ。けどその不幸なアクシデントをも糧に幼馴染とアイツはどんどん心の距離が近づいて、恋人同士になったように今は思う。



「あとお前さんが付き合ってはいけぬのは単純に時間の巻き戻しには色々誓約が掛かっているからじゃ。わしは神じゃが何でもできるとは限らん」



「じゃあ、万が一付き合うことができたら?」



「…それは彼女の死を意味するぞい」



不思議と愕然とうなだれることはなかった。

もちろん付き合うことができないのは残念じゃないといえば嘘になるが、一番心残りだった彼女に酷いことを言ってしまった言葉をなしにできてやり直せるのだ。それだけで十分救われる気がした。それに俺の幼馴染ならたとえ俺がやり直したとしても今度もヤツを選ぶだろうから…そもそも懸念するところじゃないのかも知れない。


「…分かりました。第一俺の幼馴染が俺を好きになるとかないだろうですしね」


「それもそうじゃな」


「おい」


「ふふぉwっフォ」


軽口を叩ける程度には俺もそこまでメンタルにダメージを負ってはいないらしい。


「で?その後の特殊能力とやらは?」


「そんな特別なものでもないんじゃがな、一言で表すなら人間の潜在能力を引き出せる力じゃ。つまり身体能力、記憶力、集中力、判断力とが上がるってことじゃな」


「へぇ、なんか物を浮かばせたり手から火を吹かせることができるのかと思いました」


「それは“お主の“世界の道理に反するじゃよ」


「へぇ、じゃあ異世界とかマジモンにあるっていうことか!」



また、気分が上がり思わずタメ語になる



「そんな事はお主には関係せぬ。もう時間もないのでな、お主をそろそろ飛ばすぞい」


「え、?あ、ちょっと!?まだ聞きたいことが…」


唐突な時間宣告に焦りを覚えるが、お構いなしで儀式みたいなのは進んで行く。


「頑張るんじゃな、後悔を抱える者よ、お前さんの“影の活躍“を楽しみにしておるぞい。ふふぉっふひっっw」



そう言い、変な笑い方をする神様を俺は最後に見ながら白い光に徐々に包まれていくのだった

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