第3話 入学前

どうやら目が覚めると懐かしい感覚に囚われたまま意識がはっきりしない今まで体をベッドから起こす。


あたりを見回してみるとどうやら本当に夢ではなく高校入学前の日に時間が巻き戻ったらしい。





そのまま自分の部屋から出て、一階に降りてリビングへ向かう。



「おはよう、遅いから声かけようと思ったけどちゃんと起きれたね」




久しぶりの母さんの声、そして起きてから朝食が目の前にあるという事実の暖かさに、おれな泣きそうになりながら声をかける



「おはよう、母さん朝食ありがとう」



「何変なこと言ってんの、ほらうだうだしてると遅刻するわよ」


それから朝食を済ませ玄関を出るとそこには幼馴染のモモがいた。


「おはよう、お、ちゃんと起きれたんだね?」



そんな屈託のない笑顔で挨拶を交わす。



家が隣同士なので朝は一緒に登校していたんだったな。



「おはよう、まあ寝坊しそうになったんだけどな?」



「どうせ夜更かししていたんでしょう?だめだよ体に良くないんだから」



「へいへい」



そんな軽口を交わすのも久しぶりで何だか嬉しくなる。



歩いている最中も高校時代のおれが話していた感じを意識して話しているので違和感は持たれていないだろう。



一緒のクラスだったが途中で寄るところがあるとのことで別々に分かれおれは一人教室に入り、そのまま自分の席を確認して座る。すると


「よお、アラヤ。まさかまた同じクラスになるとは思わなかったわ笑」



こいつは石上 イケで中学三年間一緒のクラスメイトでおれの親友でもあり、社会人時代でも一緒に飲みにいくほど縁が続くやつだ。



「まあ、おれはイケと同じクラスになる気はしていたからそんなに驚かねえわ」



「へへ、そういえばお前の嫁さんは?」



「用事があるとかでどっか行った。後嫁じゃない」



「そうかそうか、まさか他の男に会いに行っていたりしてなw」



「さあな」



適当な返事で済ます。おれが動揺するのを見たいんだろうが、お生憎様おれの運命は決まってしっまっている。



「さあなってお前、モモちゃんのこと心配じゃねえの?」



こいつには中学の頃から俺のモモえの好意がバレているんだっけ?めんどくさいがイケは意外といいやつなので俺のことをなんだかんだ心配しているんだろう。



だがここはあえてシラを切させて貰おう。



「なぜ俺が心配するのかわからんのだがそんなことより、お前なんか話したいことがあるんじゃねえの?なんかさっきからソワソワしているし」



落ち着きがあるようでないのがこいつの魅力だが、今回はわかりやすいぐらい浮かれているように思える。



「そりゃそうだろ、なんせこの学校の女子のレベル高いんだぜ?同い年の一年にはアイドルとかモデルとかがいるらしくて二、三年にも美人とかで評判の有名な先輩がいるらしく、実際に滅茶苦茶可愛いらしいぜ?まぁ後お前の幼馴染も美少女だけどな」



知ってるよ、確かアイドルとやらの方は国民的アイドルとして活躍するんだっけか、モデルの奴も有名な雑誌に載っていたらしい。コイツはちょっとした事情で少しだけ知っている。


モモの方は…うん、可愛いのは知っているが将来この世界の主人公の人妻になるなんていえないしな。



 そうだ、主人公くんは今どこにおるのだろうか。



「おーいみんな席につけー」



そんな声がして新しいクラスの始まりが始まる。


「おーいアラヤ、一緒に帰ろうぜ」



ホームルームを終えてその後、体育館で生徒会長が新入生歓迎の言葉をかけそのまま教室に戻り、今日は終わり

なため、真っ先にイケが声をかけてくる。ちなみに生徒会長マジで美少女だった。やっぱ何度見ても慣れないほどの幼い系美人さんだった…



隣に途中から男と仲良く遅刻して入ってきたモモは今はその男と仲良く話し込んでいるため、気を使う必要はないだろう。


今思えばここから、モモと主人公くんのフラグは立っていたんだなとわかる。


帰宅途中アラヤと一緒に道端で売っているタピオカドリンクを飲みながら適当に雑談を交わす。



「なぁ、お前今日変じゃないか?」


「何が?」


「だって一緒にモモちゃんが他の男と一緒にいるのに落ち着いているし、なんかやけに達観しているような雰囲気してるし」



…鋭いな、ていうかコイツ意外と人のことちゃんと見ているんだな。


「そうか?まぁ入学初日で浮かれていたんじゃないか?」


そういい適当に誤魔化す。



「そんなもんか。そういえば体育館に行った時チラッと別のクラスを見たんだけどよ、噂のリナちゃんいたぜ」


「?あぁモデルやっててから人気の美少女愛取リナのことか」


長谷川の幼稚園の頃からの幼馴染で実はずっと長谷川のことが好きで超一途というバックグラウンドを知ってい


る俺としては何とも言えん。てかよくよく考えなくても主人公ポジだな長谷川。今度から主人公と心の中で言っ


ておこう…。

長谷川に勝手なあだ名を自分の頭の中でつけている一瞬の脳内独り言をしてうちに友の声によって再び現実に戻る


「おいおいお前マジでどうしちまったんだ?枯れちまったか笑」


「ちげーよ」



そんなたわいもない話をしながら俺たちは別々の帰路に行き、帰宅した。


家に帰ってからやることがある。


それは神様からもらったギフトの確認、現在の状況確認だ。


まずは状況の確認から。


実際俺は冗談半分縋る気持ち半分のつもりでいたんだが、再びやり直せるなんて思っていなくてこの間の出来事も自分の悲しさが生んだ夢だろうと思っていたんだが、本当だったとはな。てか本当に神様いたんだ…今更ながら遅延して驚愕が全身にくる。


まぁまず間違いなく今の状況は奇跡だ。


あのまま青春時代に大きな後悔を残したまま社会人をして、結婚できる相手も見つからず惨めに生きていくんであろう人生をもう一度やり直せるチャンスがあるなんて…幼馴染であるモモと付き合ってはいけないと言う条件付きだがそれでもモモを傷付けた言葉がなかった事、惨めみっとも無い自分を無しに出来るんならそれだけで十分すぎるほど幸運だ。


自分がいかに幸運な立ち位置にいるか確認したところで次に、神様からもらったギフトの事について移る。


ギフトという才能みたいなものを俺にくれたっていう話だが…


早速試しに行おうと一つ今日もらった教科書を一個取り出し、試してみる。


本を開き、暗記力、集中力を高める意識で作業を行なってみる。


一ページ、一ページと天才しかありえない速度で暗記が進んでいく。


三十ページまで進んだあたりで倦怠感が出始めた。


目眩がして根こそぎ体力を奪われた感覚に陥る。



「はぁ…はぁ…体力がいるなこの能力は」



独り言をこぼしながら自分の現在の状況を確認できた。


つまりまだ俺はこの力を使いこなせないというわけか。


そう理解して俺は着替えないままベットに眠りに落ちた。





「おにいちゃん、早く起きて。お母さんがご飯できたって」



そういい俺を起こしたのは妹、池水 舞菜だ。現在中学二年。仲は昔はよく遊ぶほど仲が良かったが今はそうでもなくそっけない。今だってめんどくさそうな表情をしながら俺を見ている。


「そうか、ご飯か。起こしてくれてありがとな」



「別に、お母さんに言われたか、起こしに行っただけだし、。早くきなよ」


そういいまた舞菜は一階に戻っていった。



それからご家族でご飯を食べて、俺はまた自分の部屋に戻った。


さて、これからの立ち回り、するべきことについて考える。


今日が四月一日、俺はこれから自分の力を使いこなす訓練と体力をつけなければいけない。


体力は走り込みをするとして、能力の訓練は万が一幼馴染に気づかれてはいけないから俺の部屋か、あるいは人気のない場所がいいな。


モモに降りかかるトラブルイベントはおそらく文化祭、体育祭あたりだ、もしくは修学旅行。大きなイベントでしか、残念な思いでは記憶にない。だから俺はそれまでにできることをしなければ、あいつの思い出を最高なものにするために。


そうとなれば今から訓練を開始しなければ。


ジャージに着替えて外に出て俺は走りこみを開始した。


とりあえず体育祭まで後三ヶ月弱しかない。頑張ろ。

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