なんで生まれたんだよお前

明鏡止水

第1話

自分の番は、いつまでも回ってこない。他のきょうだいたちは、園児服に着替えさせてもらえるし、朝ごはんだってパジャマのままでいいから早く食べちゃいなさい。

と、ポテトサラダやロールパン、牛乳が用意されている。6人分だ。

自分は7番目の子だ。今日も同じ服を着て過ごす。臭くはない。においのするものは食べないし、トイレの後念入りに尻も吹いている。ウェットティッシュで体もふいている。

この家で7番目まで行き届くサービスはない。

朝は戦争のような、運動会のような。

どちらも経験したことのない、しかし確実に今。

難民として経験している。

7番目は1番IQが高いと同時に低かった。

高いからこそ目の前のことを受け入れて全てを理解し、低いからこそここからまだ抜け出せない。

IQ7くらいの気持ちでいよう。

そうすれば家族の食べかすが7番目のご馳走になるのだから。

7番目はsevenと呼ばれていた。sevenには名前があるが呼んでもらえない。

sevenは今日は自分で風呂に入ってみようと思っていた。きょうだいたちが、朝から追い焚きをしていて湯が温かいままなのだ。

7分だけでも浸かりたい。sevenは思う。しかし、その前に空腹で倒れる前にきょうだい達の食べかすだ。しかし、きょうだい達は食欲旺盛だった。

手元に残るものは、いや、初めからsevenの手元なんてものは無いのだ。

seven、今日もまた7日間が繰り返される。

sevenは出かけることにした。

朝から出るんじゃありません!

母の声が飛ぶ。本当は母もsevenを可愛がってやりたいのだ。誰よりも甘やかして、甘いホットケーキや、プリンを食べさせてやりたい。

でも無理なのだ。sevenの前に6人いる。ズタボロになって母はワンオペでseven達を見ていた。父というものは仕事以外寝てばかりいる。

sevenは、父が好きだった。空腹でも父のように眠れたら、とsevenは父に夢を見ていたのである。

近づいて、自分はあなたの7番目の子ですよ、と念じてみる。反応はない。

きょうだいの1人が言う。

「お前、なんで生まれてきたんだよ」

自然に生まれ自然に育っている。扱い方が違うだけで、同じ両親の子供だ。末っ子で7番目ということ以外は。他の6人は学校に持っていくものをきちんと出る前に点検し、あるいは髭を剃って出て行った。7番目の自分が行くところはない。いやある。保育園だ。もうすぐ、4歳から5歳になる。

sevenは賢い。たとえ7歳になっても、sevenの扱いは変わらないのではないか。

sevenは幼いながらに、死ぬことを考えていた。

今日果たして月曜日。母は、珍しく余ったヨーグルトのカップをひとつくれた。お腹がゆるくなるだろう。

「ごめんね、なな。あなたのことはあいしているわ」

ごおー。

父のいびきでかき消されながらも、聞こえていた。

保育園での食事が楽しみだ。

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なんで生まれたんだよお前 明鏡止水 @miuraharuma30

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