7にこだわる投資家が事故に合いますけど・・・

最時

第1話 7にこだわる男

 黄昏を越えて、窓から見える街は夜景になっていた。

 暗い部屋でモニターの明かりが部屋を揺らす。


 今日の取引を振り返る。

 ここのところ芳しくない。

 悪いとまでは言わないが、結果はいまいちだ。

 

 取引は情報やAI、経験などによって行っている。ただ、やはりギャンブル的な要素はある。

 迷ったとき、俺は7に関係ある方を選択することにしている。

 ラッキーセブンだからとかそんな迷信を信じているわけではない。

 実際に統計を調べてみると7が一番良かったのだ。

 ただ単にサンプル数が少なくて、偏った結果が出ただけかも知れないのだが、それでも7で勝たせてもらった経験から抜け出せなくなってしまっていると思う。

 俺はあらゆる場面で7を選択するようになっていた。

 

 ただ、ここのところその7の調子があまり良くない。

 悪くはないのだが、他の選択の方が良い場面が多い。

 所詮ギャンブルなのだからそういう物だと言えばそうなのだが。


 今日は不動産関係の知り合いと食事することになっている。

 新たな投資先として不動産を考えていてその相談のためだ。

 七丁目の店で午後七時に待ち合わせだ。

 どうでも良いこだわりだ。

 どうでも良いから少し遊んでみても良いじゃ無いか。

 7への信頼が揺らいで、それを認めたくなくて逆に7を余計に意識しているんだと思う。


 ナンバー7の付いた車で店へ向かう。

 道は混んでいた。まだ帰宅ラッシュの時間帯だ。

 もう7時になるところだ。信号待ちで遅れるとメッセージを送る。

「失敗したな」

 とつぶやく。

 行ったことのない店でここまで道が混むとは

 車の時計は7:00に変わり、信号は青になってアクセルを踏んで交差点に入ると左から光が強くなる。

 見ると車が突っ込んできて

「んっ」


 ベットで目が覚めた。

 看護師がいる。

 病院か。

 声を出そうとするが上手くしゃべれない。

 俺のうなるような声に看護師が気づく。

「七条さん。良かった。今、先生呼びますね」


 聞くと、俺は交通事故に遭って意識不明で緊急手術を受けて一週間寝ていたらしい。

 死んで当然の大事故だったようだ。


 目を覚ましてから3週間が経った。

 リハビリでようやく一人で日常生活が送れそうなくらいに回復した。

 医師や病院のスタッフ、とくに担当看護師の八木さんに感謝した。


 退院のため、荷物をまとめていると

「七条さん。退院おめでとうございます」

「ありがとうございます。八木さんには本当にお世話になりました」

「いえ。そういう仕事ですから」

 そこへ医師が来た。

「退院おめでとうございます」

「ありがとうございました」

「正直、七条さんが運ばれてきたときはわからないなって思ってましたけど良かった」

「おかげさまで、ありがとうございました」

 感謝で涙ぐんだ。

「本当に。奈々ちゃんがたまたま現場に居合わせて救命措置をしてくれたのが運が良かった」

「えっ」

「話してないの?」

 医師は八木看護師を見ている。

「はい」

「どういうことですか」

「実は私、事故の時、七条さんの後ろにいたんです。それで」

 俺は奈々さん手を取っていた。

「結婚してもらえませんか」

 自分でも信じられない言葉が出た。

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