「植野さんの動画って、基本は本名で活動してますよね」

「そうだな。植野楼、いい響きだろ？」

動画投稿と言えばゲームを実況プレイしたり話題の商品をレビューしたり…………そんなチープなものを想像するが、彼の動画は地域の都市伝説や刑事事件を取り上げて紹介するものが大半だ。

このような解説動画は一部のオカルトマニアに需要があるらしく、平均でも十万回再生は安定して叩き出している。

「前にも言ったが、オカルト好きってのはピンからキリまで幅広い。地方まで足を運んで呪いの品を収集する者がいれば、ネットの怪談を読み漁るだけってのもいる。俺の動画は、後者に向けて作成してるんだ」

「凄いですね。もうこれだけでも食っていけるんじゃないですか？」

そうもいかない、と植野楼は指を振った。

「動画の収益ならとっくの昔に停止されたよ。同じ動画をあげ続けるとダメらしい」

「……大変なんですね」

動画投稿者の苦悩と、収益がなくなっても投稿を続ける植野楼のオカルトに対する情熱が垣間見えた瞬間だった。

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