TIPS 弥陀羅修二の依存症

「そういえば弥陀羅さん」


なんだ。 と暗い部屋の中で弥陀羅修二が答えた。


「いつも飲んでるそれ、なんのジュースなんですか?」


自販機の一番下に並んでいるような大きさの缶ジュースで、緑の基本色に赤い模様が描かれた、見るからに体に悪そうな飲み物だ。


「ガラナ・アンタルチカ。 アマゾンで取られた原料、ガラナを使って製造された、ガラナ飲料というやつだ」

「聞いた事ないですね、ガラナって」

「アンタルチカを知らないのならガラナ飲料自体も知らないだろう。 それほどまでにこいつは有名なのだ」


左右に缶を降って、何故か得意げである。


「でもそういうの、あんまり箱ごと買って飲んだりしてると体調崩しますよ?」

「大丈夫だ、そこまで健康を損なう飲み物ではない。 北海道の辺りだとガラナ飲料はかなりメジャーらしいしな」


とは言っても、目の前のこの男は今にも倒れそうなほど細い体つきをしていて、見ていて心配になってくる。


「そのガラナなんとかってやつ以外にも、ちゃんと水分摂ってます?」

「アンタルチカだ。 ……水は飲むが、他のジュースや茶はここしばらく口にしていない」

「……」


この分だと食生活全体が怪しくなってきた、とゴミ箱に燃えるゴミと一緒にして缶を捨てる弥陀羅に、私は軽く不信感を覚えるのだった。

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