第27話
片足を闇の中に入れ、さらに奥へと入っていく。なんだか手足の先がむず痒いような感じがする。
そう思った瞬間。
その足に激痛が走った。
「なっ!」
慌てて足に視線を向けると、その部分が葉っぱが虫に食われたように無くなっていた。
隣りにいたレナに視線を向ければ彼女の左足と右腕も同様の状態になっている。
俺は悟った。
「この闇そのものが魔物なのか!」
大失態だ。魔物の腹の中へ自ら踏み込んじまった!
身体の手足から先が段々と食われていく。
激痛が全身を襲う。俺は慌ててポーションを使った。食われた手足が即座に修復される。そしてレナにもポーションを掛ける。
しかしジリ貧だ。
治った先から、またジリジリと食われていく。
「くっそぉ!」
こんな戦いがあるかよ! 終わり方があるかよ!
敵の正体すら掴めずに終わるのかよ!
しかし、その発想でピンときた。敵の正体!
俺は鑑定能力を使った。敵の正体が分かれば何か対処法があるかもしれないと思ったのだ。
鑑定能力で解析を起動する。すると即座に反応が返ってきた。記憶が流れ込んできたのだ。いや。色んな情報が流れてきたと言うべきか。
頭の中で色んな情報が統合されていく。
情報生命体であること。
生物固有の情報を食べる生命体であること。
食べる為には、その生物を知る必要があること。
知らない生物。適応化が進んでいない生物からは情報を得られずに肉塊へと変えてしまうこと。
激痛に耐えながらも解析が進んでいく。人間の情報も、この生命体は数多く持っていた。俺の鑑定能力が情報を蓄積していく。
そしてある一定を超えた所で弾けた。
蓄積された情報から能力が覚醒したのだ。
俺はさっそく能力を起動する。
起動する能力は『書き換え』だ。
この情報生命体自身の能力を俺も得たのだ。
そこからは情報生命体との一騎討ち。
情報生命体が俺の情報を書き換えて食べれば、俺も情報生命体を書き換えて自分の体に書き換えていく。
一進一退の攻防。
どっちが先に、どっちを食べるか。
情報生命体……名前が長いな。仮称『虫喰い』とするか。虫喰いは最初こそレナも食べていたが、段々と余裕がなくなっていったようだ。今では完全に俺だけをターゲットにしている。レナは手足こそ喪失していたが死んではいない。自分でポーションを飲んで傷を癒やし、そして俺の後ろで事の経緯を見ている。
俺の後ろにはレナがいる。
負けられねぇ!
意志が俺に力を与えてくれる。
それからどれくらいの時間が経ったか。
次第に闇が薄れていく。虫喰いの情報をどんどん吸収する俺。脳には様々な人や魔物のデータが蓄積されていく。この虫喰いが知っている事の全部。
そして……
闇が全て消えた所で俺は膝を付いた。レナが駆け寄ってくる。
「大丈夫?」
俺は苦笑い。
「あぁ。頭が少し痛いが、まぁすぐに治まる」
レナが不安げに辺りを見回した。
「勝ったの?」
「あぁ。終わったよ」
そうレナに告げて、俺は盛大に後ろに倒れたのだった。
「あぁ。しんど」
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