第19話

 街の周辺の魔物を適当に狩って経験を積んでいたら8日が経った。あまり無理をしない方針で。だから怪我なく済んだ。


 特注品の実験器具も出来上がり、家の実験室となる一室に搬入してもらう。


「さて。しばらくは実験に籠もりきりだ」


 それから三日三晩。材料が許す限り、作りに作った。作った数は全部で47本。これでしばらくは作らなくていいだろう。


 4日目。研究室のソファーで寝ていたところ。


「いい加減にしなさぁい!」


 そう言ってレナが部屋に突入しきた。


「うわぁ!」


 俺が飛び起きると、レナがプリプリと怒った様子で言った。


「うわぁ。髪が油でテカテカしてる! 爪も真っ黒! 何より臭い!」

「そんなに酷いかな?」


 と答えると、レナが呆れた様子で見せた。


「レノルさん!」

「はい」

「さっさとオフロに入ってきなさぁい!」


 そう言って俺を叩き起こしたのだった。その様子が、なんだか元妻を思い出させる。レナにそう言ったら剣呑な空気をまとって一言。


「誰が奥さんか! ってかこんなにダメ人間だとは思わなかった! 奥さんも苦労してたんだね」


 俺は苦笑いを浮かべながら訂正する。


「元ね。元妻」


 声が少し沈む。するとレナはあっけらかんとした様子で言った。


「その奥さんってどんな人だったの?」

「え? うぅん。そうだなぁ。世話焼きで綺麗好きで働き者で……可愛い人だったよ」

「ふぅん?」

「幼馴染だったんだ。子供の頃から一緒だった」

「そっかぁ。それが今は他の男とねぇ」


 その言葉に少しずきっと心が痛む。


「俺は……間違っていたのかな?」

「そうなるね。少なくても元奥さんにとっては」


 レナの率直な言葉に沈黙する。しかし彼女は言葉を続ける。


「でも……だからって許されることじゃないけどね」


 俺は溜め息。


「それを分かった上で。それでも……か」

「よっぽど魅力的な浮気相手だったんだねぇ。元親友さん」

「あぁ。カッコイイ奴だよ。気遣いが出来てマメで。金の髪なんて何時もサラサラだよ」

「それでいて人を平気で裏切れるような?」

「あはは。辛辣」

「でも、そういう冷酷さも持っていた」


 俺は少し考えた上で答えた。


「それだけ俺がダメ人間だったのかもな」


 するとレナ。


「まぁ生活破綻者なのは間違いないけどね」


 俺は笑う。


「そんなに酷い?」

「酷いね。というわけで、さっさとオフロに入ってきなさい!」

「……うん」


 俺はそのままトボトボとお風呂場に向かう。そんな俺にレナが言った。


「でもさ。確かにレノルにも悪いところがあったかもだけどさ、それでも、その2人がしたことは許されることじゃないよ」


 その彼女の言葉に俺は少し救われた気がした。

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