第18話

 色々と買い物をしなくてはいけない。


 まず真っ先に購入しなくてはいけない物がビーカーや試験管と言った器具だ。


 特注品なので制作に時間も掛かる。俺の要望に応えて貰うために職人さんには頑張ってもらうことになるだろう。


 それから生活必需品から武器や装備品も幅広く購入していく。


 ただし剣も防具も一般的な品質のラインから少々落ちる型落ち品を選んでいく。あんまり良い品を装備していると、変な輩に絡まれるからな。その代わりカバンは良いものを求めた。丈夫で大量に入るマジックバックだ。ここは妥協できない。収入に直結するから。


 少々値が張るけどホブスさんも了承済みだ。


 そうやって色々買い物をしていくだけで3日が経った。器具を注文している間に一度、天空の塔に入ろうと思った。ただ待っているのもつまらないので。


 レナに相談すると「私が案内するよ」と言ってくれる。ありがたい。


 天空の塔は街を出て徒歩で2時間ほどの所にあるらしい。道中にも魔物が出るとか。それも大量に。


「ゴブリンとかコボルトね」


 ふむ。まぁそれぐらいなら何とか。


 レナから更に追加情報が。


「ただこの辺に出るゴブリンもコボルトも妙に若い個体ばかりらしいのよ」

「それって良いの悪いの?」

「うぅん。若い個体は身体的には強いけど魂的には弱いのよね」

「つまり?」

「個体としては強いのに、手に入る魔石は価値が低い」

「うわぁ。最悪」

「でも変よね」

「うん? 何が?」

「若い個体が多いってことはよ。老いた個体はどこに行ったの? てなもんなのよ」


 それは確かに謎だ。


「そこで一つの仮説が生まれたの」

「それは何?」

「天空の塔で若返らせてもらっているんじゃないかって」

「ゴブリンやコボルトが?」

「そう!」

「んなバカな」

「ねぇ。変な話よね」


 俺とレナは、剣と装備品の試しに天空の塔への道を歩く。すると出るわ出るわ。


 ゴキブリかってぐらいに、わんさかとゴブリンやコボルトに遭遇した。ちょっと街から出て小一時間も歩くと10匹前後は狩れる。しかも言われていた通り真正面から戦うと妙に強いし。魔石は価値が低いしで最悪だ。


 3日間。試しに街の周りを歩いたが30匹は狩れた。


「どんだけいるんだよ!」


 思わず突っ込む。どっかで養殖でもしてるんじゃないかってぐらいに狩れる。その事をレナに言うと。


「ってことは何? 老いた個体が居ないのは、老いる前に誰かが食べてるってこと? まさか……ねぇ?」


 俺も思わず顔をしかめる。


「そこまでは考えてなかったな……」


 ゴブリンやコボルトを食う?


 いや。さすがにそれはちょっと……


 あっ、考えただけで吐き気がする。

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