第17話
生活の全てをみてくれると言う高待遇っぷり。
しかしそれに甘えてもいられない。
出来れば自分で生活費は稼ぎたい。
そこでトリートのポーションを作って売るという選択肢が出た。
それをホブスさんに相談したところ、それは止めた方がいいと言われてしまった。
「レノルさんの元ご親友ですが、現在は王都で名誉男爵にお付きじゃ」
あの野郎ぉ。俺が嫉妬の炎を燃やすとホブスさんが言った。
「もし。現在の状況で彼以外の手元からトリートのポーションが出回ったら、どうなるじゃろうな」
俺は考えてみた。思いついたのは碌でも無い内容だ。
「俺の存在が消される?」
「だけならまだいいですじゃ。それどころか研究を模倣した。または盗んだとして罰され兼ねない。その上で処刑されるじゃろうな」
俺は沈黙する。もう既に俺の手の届かない場所にいるのか……
ガックリと肩を落とす俺に、しかしホブスさんは優しげな表情を浮かべて言った。
「とはいえ製法を知っているというのに、使わないという手はないですじゃ」
どういうことですかと問う。すると……
「御自分で使う分だけ作ればよろしい。大々的に売り出せば処罰されるが少量をこっそり。自分のために使うのならば、早々バレないでしょう」
そう言って悪どく笑うホブスさん。
「天空の塔を攻略なさるのでしょう?」
「……はい」
「うむ。ならトリートのポーションは役に立つ」
なるほど。以前に作った時は、そこまで考えていなかったが、そうか自分のために使う分には問題ないのか。
「ポーションを作るために道具が必要じゃろう?」
「えぇ」
「かなり特殊な道具を使いなさる?」
「そうですね。ガラス製の容器や陶器が必要です」
「ふむ。用意させましょう」
俺は驚く。
「いいんですか!」
「あぁ。構わんよ」
「何から何まですみません」
俺は、せめてものとばかりにと言った。
「天空の塔で手に入る素材は全てホブスさんの商会に納めたいのですが?」
「ふむ。まぁそれで心の重しが軽くなるのなら」
「すみません。今はそれぐらいしか返せるものがない……」
「ふぁっふぁ。もうその話はよそうじゃないか。お互いに借りを返し合ってばかりじゃ」
「はは。ですね」
ホブスさんには、いずれ何か大きな恩返しが要るだろうな。漠然とだがそんな事を考えたのだった。
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