第3話 勇者を見つけたからボーナスをもらえるぞ!

「な、なんてことだ、伝説の剣を、こんな小僧が・・・」

兵士長は呆然として立ちつくしている。当のアズナにも何が何だかさっぱり分からない。


しばらくして、少年達がアズナをとり囲んだ。

「アズナ、すごいじゃん!」

みんな興奮しているが、アズナは剣を握ったままぼんやりしている。


「しかし信じられんな、こんなボケーッとした奴が」

兵士長がいぶかしげにアズナを見ていると、

「兵士長さん!」

少年達が真顔になって反論した。


「アズナはただボーッとしてるだけじゃないんだよ!」

「そうそう、すごいスケベなんだから」

「おまけにモテない」

「ナンパがうまくいったことなんて、一度もないんだから」

擁護なのか、けなしてるのか分からないようなことを口ぐちに言う。


兵士長は一瞬うろたえたが、気を取り直して、

「とにかく、伝説の剣を抜く者が見つかったのだ、王様に報告せねば!」

と、飛び跳ねるように城へ向かった。


「ついに俺は勇者を見つけたぞ!ボーナスをたんまりもらえるぞ!ヤッホー!」

本音がダダ漏れの兵士長を見送りながら、少年達は我に帰ったように話し始めた。


「勇者だってよ」

「アズナが勇者かぁ」

しかし、アズナにとってはどうでもよく、今夜の予定を考えていた。


「なあ、それよりも今夜、ナンパに行かないか?」

アズナは何事もなかったかのように遊びの誘いをした。

「ああ、そうだな、行こう、行こう」

少年達も剣のことは忘れて、提案に乗っていた。


少年達はそこで解散し、アズナは家に戻っていった。




夜になるとナイス亭は酒場になる。夕飯はそれまでに食べることにしていた。


「アズナも、たまには手伝ってほしいもんだねぇ」

夕飯の席で、母のジーナはアズナをたしなめた。

「うん、たまに手伝うよ」

アズナは適当に返事をして、パスタを夢中になって食べている。


「あんたはこの店の跡取りなのよ、自覚を持ってよね」

姉のリナもアズナに説教を始めた。


「また姉ちゃんの小言だよ。もっと大きな心を持たないと、おっぱいも大きくならないよ」

「いつもそんなことばかり考えてんだから、スケベ!」

リナはそっぽをむいてしまった。


「ガッハッハ、英雄は色を好むと言うからな、こいつは大物になるぞ」

父のリチャードは肉を豪快に頬張りながら、アズナの頭をポンポンと叩いた。


「あなたはすぐアズナの肩を持つんですから」

ジーナは呆れていた。

「僕の友達も、兄ちゃんのことをエロ魔王って言ってたよ」

弟のトムが無邪気に会話に参加した。


「魔王かぁ、お前の友達は見所があるな。よし、魔王にでもなるか」

夕飯を食べ終わったアズナが、弟に冗談を言っているそのときだった。


トントン


ドアをノックする音がした。リチャードがドアを開けて

「すみません、まだ開店前で・・・」

と言ったところで固まってしまった。


「あなたは、だ、大臣様!」

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