第2話 あれ、なんか抜けちゃった
「みんな、来てくれ!」
アズナはかくれんぼをしている仲間を呼び集めた。6人の少年達が剣を囲んであれこれ話し合い始めた。剣は彼らのあごのところくらいまでの長さだ。
「なんで剣が地面に刺さってんだろう?」
「売ったら高くつきそうだな」
などと口ぐちにしているところに足音が聞こえた。
「お前ら、そこで何をしている!」
重厚な鎧に身を固めた、強面の男が近づいて来た。
「あれって・・・」
「ああ、城の兵士長だ」
少年達は意外な人物の登場に驚いていた。
「ここは立ち入り禁止区域だ、お前らも知ってるだろう?」
そう言われて
「そういえばそうだったな」
「だから来たことがなかったんだ」
などと少年達は互いに笑いだした。
「笑いごとではない!」
兵士長は一喝した。少年達が静まったのを見て、
「よいか、この剣は500年前に伝説の勇者が魔王を封じ込めた、由緒ある剣である」
と語り始めた。
「今まで何人もの力自慢や腕利きの戦士が抜こうとしたが、誰にも抜くことができなかった。剣に選ばれた勇者だけが抜くことができるのだ」
少年達は兵士長の言葉を固唾を飲んで聞いている。
「魔王が力を回復しつつある今、この剣を狙って我が国に攻め込んでくるかもしれないのだ」
兵士長はひと呼吸ついてから続けた。
「一刻も早く、この剣を抜いて魔王と闘う勇者を見つけなければならない」
「なんか、聞いたことがあるような・・・」
「早く勇者が見つかるといいね」
少年達はやっと口を開いて話し始めた。アズナはというと、剣には興味がなく、夕飯のことを考えていた。
兵士長は少年達をひと通り見て
「まさかとは思うが、お前らの中にこの剣を抜くことができる者がいるのか?」
「まだ触ってもないよ」
少年達は首を横に振ってその場から退散しようとした。
「ものは試しだ、ひとりずつこの剣を抜いてみろ」
兵士長は少年達に命じたが、
「やだよ、気味が悪いよ」
と、みんな逃げ出そうとしている。
「いいからやってみろ!私に逆らうということは、王様に逆らうことと一緒だぞ!」
兵士長に圧倒されて、少年達は渋々剣を抜くことにした。
順番にひとりずつ抜こうとしたが、どんなに力を入れてもビクともしない。
「やはり、抜けんか・・・」
兵士長が落胆していると、端にいたアズナに目が向いた。
「そこのお前、まだやってないだろ!」
アズナは苦笑いをして
「いやぁ、僕は疲れることは苦手でして」
と両手を前に出して振る。
「いいからやれ!」
兵士長はイライラしながらアズナの手を引っ張った。アズナは仕方なく、
「(抜くフリだけしよう)」と思った。
アズナが剣の柄に軽く触れたとき、信じられないことが起こった。
「あれ、全然力を入れてないのに、なんか抜けちゃった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます