第六話 アンラッキー7
俺はトレーニングフロアの更衣室でTシャツと短パンに着替えた。所持している武器はすべてロッカーに仕舞う規則だ。ということは、裏切り者とは素手の勝負になる。
俺が真顔でロッカーの扉を閉めたとき、隣の女子更衣室から女たちの悲鳴が聞こえた。ひろしが何かしているのだろう。
俺は溜め息を吐きながらトレーニングルームに入った。
中にいるのは六人だ。ウエイトマシンで筋トレに励んでいるのは四人。ランニングマシンの上に女が一人。カウンターでプロテインを飲んでいる男が一人。
その男がカウンターの上にぐたりと倒れた。どうやら、プロテインに毒を盛られたようだ。
やはり裏切り者はこの中にいる。
すると今度は、煙と火花を放って急激に速度を上げたランニングマシンから女が飛ばされた。女は壁に激突してくだりと倒れた。マシンに細工か!
衝突音がしたウエイトマシンエリアに俺が顔を向けると、ベンチの上で一人がぐたりとしていた。横の床には油で光ったダンベルが転がっていた。手から滑ったダンベルが直撃したのだろう。これも細工だ!
「く、苦しい……持ち上げてく……」
ベンチプレスをしていた男が胸の上に載ったバーベルの重さに苦しんでいる。彼の頭の上では、赤で「裏」と書かれた黒いTシャツを着た補助役の男が片笑んでそれを眺めていた。
「くそっ、何だ、これは! 誰が接着剤を!」
チンニングスタンドで懸垂をしていた男がぶら下がったまま叫んだ。どうやら両手を器具に接着されてしまったようだ。
黒Tの男がその男の頭部に五キロのプレートを投げつけた。チンニングスタンドにぶら下がったままの男はぐたりと項垂れる。
裏切り者はこの黒T男か!
黒Tの男は言った。
「俺は七号。規則では自分の番号を明かすのは禁止だが、あえて言おう。そう、この七人の中では俺が最強だ。おまえにとってはアンラッキー7だな」
男は拳を構えながら間合いを詰めてきた。
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