第七話 いいわけ

 俺たちは、管理職からは番号で呼ばれるが、殺し屋同士では番号を使わない。互いの番号を知らないからだ。


 こいつが七号だったとは……。


 奴は余裕の表情で言った。


「悪い事は言わん。番号が示す実力は確かなものだ。無理をせず降参しろ。そうすれば楽に死なせてやる」


「なぜ組織を裏切った」


「ふん。俺は縛られるのが嫌いなだけさ。ここは規則、規則と煩さ過ぎる」


「随分と子供じみたいいわけだな。本当は、この仕事が怖くなったんだろ」


「黙れ! 低位の奴が偉そうに!」


 七号は俺に拳を繰り出してきた。俺はそれを屈んで避けると、七号の腹に一撃を加え、同時に奴の足を蹴り払った。床に倒れた七号の胸倉を踏みつけた俺は、奴に言ってやった。


「低位だと? おまえ、なに勘違いしている。俺たちの部署には九人所属しているんだぞ」


「ボスと二号は管理職だろ。実働部員の俺たちは七人……はっ!」


 驚いた顔をしている七号を見下ろしながら、俺は言った。


「ようやく気付いたみたいだな。実働する現場要員、つまり殺し屋の番号は三号から始まるんだ」


「と、という事は……」


「そうだ、おまえは最強じゃない」


 俺は奴の鳩尾に踵で一撃を加えた。七号は腹を抱えてのた打ち回る。


 俺は続けた。


「冥土の土産に教えてやろう。俺の名前はナインだ。九号は俺だ」


 そう、名前が無いんじゃない、名前はナインなんだ。つまり、最強は俺。


 俺は、血相を変えて後退りする七号を指した。


「おまえこそ、アンラッキーセブンじゃねえか。どうするよ」


 奴はきびすを返して逃げ出そうとした。俺は七号を投げ飛ばして床に倒すと、走ってきたひろしに指示した。ひろしは咥えていたブラジャーの束を七号の上に載せた。


 ひろしを追いかけてきた女性職員たちがモップやパイプ椅子を振り上げながら七号を囲んだ。


「違う、俺じゃない!」


「いいわけするなあ!」


 俺はひろしを連れてその場を後にした。背後で七号の悲鳴が響いていた。



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