第十四章 末っ子皇女、聖女に認定される!?
第133話
ヴァノ聖国。
国土面積は小さいが、全ての宗教の始まりの地とされる場所に神殿を構え、各国から自治をもぎ取った結果『国』として認められた、希有な例だ。
宗教は人の心を救う。拠り所となる。
そのため国土面積は小さくとも、強力な権力を有していることになる。
……つまり、各地に点在する信徒たちっていうね。
この世界には神様がたくさんいらっしゃる。
国ごとに宗教が違ったりするけれど、ほとんどの国が信仰の自由を認めている。
種族ごとに信奉する神様の割合が違うのは、結構面白い統計データだと思った。
ちなみに精霊を友とするエルフたちも信仰深い人たちだよ!
自然の恵みを与えてくれるってことで大地の神を信仰している人たちが多い。次いで天候の神。
獣人族たちは豊穣を湛えて大地の神、次いで力の神を信仰しているって聞いた。
人間族はほんとこれはバラバラで、商業の神や医療の神が人気だって聞いてる。
人魚族とかほかの種族でもまた違うっていうから、種族特性とか住んでいる土地柄とか……そういうのに影響されているんだろうなって思うと面白いよね!!
そしてそれらの神とは別に、信仰の根底にあるとされているのは創造神様と言われている。
私たち生きとし生けるものは創造神様と繋がっていて、呼吸をするのと同じレベルで私たちは創造神様に守られているってのが神学の大元である。
正直、前世の感覚そのまま『特に普段から信心深いことしてないけどなんかあったら神様頼みしちゃうあれと同じってことか?』って思ったのは内緒だ。
あの漠然とした『神様お願いー!』ってしている時の相手が創造神様ってことでしょ。
そんなの言葉にしちゃうと神官様に叱られて神学のお時間を増やされそうなので勿論言わないけどね!!
(でもその創造神様を奉ってるヴァノ聖国が私を聖女に認定って)
このか弱い治癒魔法のどこにそんな聖女的要素を見いだしたんだ!?
別に今のところ世界のどこかで災厄が起きているとか、ゲーム的な魔王みたいに邪悪な存在が目覚めた……なんてファンタジーなことは起きていないはずなんだけど。
(兄様の反応を見る限りいいものではなさそうな気がする……)
この世界における〝聖女〟の記述は少ない。
そもそもが夢物語レベルで経典にその存在がほんの少し記されているだけである。
学者たちにとってそれは〝信仰の対称としての偶像〟みたいなものなんじゃないかっていう話だ。
なんていうの? お偉い神官様たちは常々そこにいてくれる安心感、でもって聖女っていう特別なアイドルが出てきたらわーって場が盛り上がる、みたいな!
自分の中じゃわかりやすいたとえができたなって思ったけど最低だな、おい。
知性のかけらもない感じになったわ……。
「兄様、聖女ってなんなの……?」
「知らん」
「即答!! いやそうじゃなくて……私が聖女に認定されると、どうなるの?」
「……ヴァノの神官どもが言うことは回りくどくて聞いてられん」
「聞く気ないヤツだ」
ヴェル兄様、やればできる人なんだけどやりたくないことは本当に最小限しかやらないからな……そういう点をサポートすることで仕事がもらえているからいいんだよってオルクス兄様は笑ってたけども。
謁見の間の前で、ヴェル兄様は私を降ろした。
若干名残惜しそうなのやめてくんないかな、私もう十歳ですからね……!?
「陛下、王太子ヴェルジエット=ライナス並びに第七皇女ヴィルジニア=アリアノット、お呼びと伺い参りました」
「うむ。……ヴェルジエット、お前は余の右隣、ヴィルジニアは左隣に席を用意した。座るがいい」
「ありがとうございます」
謁見の間はとても広くて、絨毯張りだ。
以前もここで魔国の人たちをお出迎えしたなあ、なんてことを思い出しつつ私たちは父様の前に立っている人たちの姿を横目で見た。
綺麗な神官服。でもちょっと見たことないデザイン。
あれがヴァノ聖国の神官服なんだろうか。
創造神の神殿限定品ってやつなのかな。
「二人とも聞け。ここにいるはヴァノ聖国の神官どもだ。中央に立つのがマルティレスという代表者だ。さあ、貴様らが望む皇女との謁見だ、光栄に思うが良いぞ」
父様、父様、いきなり攻撃的すぎて私なんにもついていけてないよ……!!
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