第98話
「……なるほど、それで俺との茶会の席だというのにカレン様の話がしたいと?」
「そうです、私たちが仲良くしているところを見せればきっと少しは安心できるんじゃないですか? でもその理由が知りたいんです」
「……俺やカレン様のような弱者は、王に認めてもらえない。それが辛いなら、外に出るしかない……それが、俺のためであるとカレン様はそう仰いました」
王に認めてもらえない。
私と結ばれれば、フォルティス様は『騎士』になれる。
つまりはそういうことかな?
(うーん、これは拗らせてるなあ)
一応ね、アル兄様にも相談してみたんだよね!
で、アル兄様いわくなんだけど……フォルティス様もカレン様も、それぞれ拗らせているんじゃないかって話。
『僕は兄妹たちのおかげでまだマシだと思うけど、なんていうか……スペルビアの王、つまり僕の祖父はねえ、色んな意味で迫力のある人なんだよねえ』
魔術師になった孫に『獣人の誇りを忘れたのか!』って殴りかかったらしいけどそれを魔法で防いだら、何故か『ならよし!』ってするような王様らしい。
アル兄様も最初は否定されているような気がしたから苦手だったらしいんだけど、オルクス兄様がその話を聞いてスペルビアは弱肉強食の考えが強いから、魔術師をイコールで弱いって印象を持っているんじゃないのかって感想を述べたらしいのよ。
だから、スペルビアの王様の一撃を凌ぐ魔法を使ってみせたアル兄様を認めたんじゃないかって話。
そしてその一撃に耐えられない身内……つまりカレン様やフォルティス様に対して『弱者はすっこんでろ』って言い方をするのは翻訳すると『お前はか弱いんだから後ろで守られてろ』っていうことなんじゃないかってね。
オルクス兄様いわく、ヴェル兄様の言い回しとよく似ているらしい。
うん、うちのヴェル兄様はそこまでじゃないと思うよ!?
それにしても大丈夫なのか? 獣人族の国、ちょっと脳筋過ぎない?
(……ってことをフォルティス様に告げても、きっと素直に『そうだったんだ』で納得はできないだろうって兄様も言ってたのよねえ)
カレン様はカレン様で、自分がお荷物だとか肉食獣種なのに弱虫だとか、そういうことを良く言っていたからイライラするってカトリーナ様が言っていたので多分そういうこじらせなんだと思う。
みんな拗らせすぎじゃない!?
「……フォルティス様は、スペルビアで認められたいんですよね?」
「そうですね」
私の問いに、フォルティス様は即答だった。
強い意思を感じるう……。
「俺はウサギの獣人として、王族としては守るべき存在という見られ方をして育ちました。ですが、俺は国のための矛である王族の一員、戦える体を持っている。守られる側でなど、いられませんでした」
スペルビアで強き戦士としての能力は、やっぱり肉食獣種が大半を占めている。
肉食獣種の中でもやはり大型獣種、中型獣種と来るからそこに草食獣種が入っていくのはとても大変だ。
しかも、ウサギという小型獣種ならなおのこと。
(それでも、諦められないんだよね)
なりたいもの、掴み取りたいものを諦められない気持ちは、私もわかる気がした。
私が、前世の私がかつて親に認めてもらいたいと思ったあの気持ちだ。
吹っ切れたつもりだけど、胸がズキズキと痛んだ。
(……幸いなのは、前世の親とスペルビアの王様は違うってこと)
まるで気遣いが伝わっていないので意味をなしてないけどな!
そして拗らせの原因がなんとなくわかっても対処の方法がまるでわかんないんだよなあ!!
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