第57話
パァッと広がった魔方陣は、攻撃を受けたとき特有の反応を見せてそれにグノーシスとパル兄様がギョッとする。
咄嗟にグノーシスがシスター・ルーレの腕を引っ張って自分の背後へと押しやり、傍らにいたテトに私を渡した。
「なんだかわからねえモンを相手にするのは不利だな……おいヴィルジニア! お前を攻撃したのはお前が見えるってわんころか!」
「そ、そう!」
「お前めがけてだったか?」
「今も来そう」
そうだ。この犬は私だけを見ている。
前に立ちはだかるグノーシスとパル兄様のことなんてまるでお構いなしに、私の方へと視線を向けている。
グルグルという唸り声すらはっきりと聞こえるというのに、なんで兄様たちにはわからないのか私は怖くなってテトにしがみつきながらも、犬から目を離せずにいた。
「状況がわからねえ。一旦下がる」
「は、しかし……見えない相手にどのように」
「この部屋にいてあの女の傍にいたってことは、少なくとも部屋の外に出ればいいんだろう。シスターたちが襲われた痕跡もないことを考えれば、あの女に関してだけの話なのかもしれないが……」
兄様の言葉は殆ど正しいはずだ。
でも犬は私から目を離さないし、ついてくる気配がする。
(なんで? どうして?)
『それってさあ、アナタとあの寝ている人間に似た魔力がまとわりついてるからじゃなあい?』
「えっ!」
『オルクスがねーえ、お仕事終わったからこっちに合流したいんですって! アタシはメッセンジャー頼まれて来たの!』
ケラケラと精霊さんが楽しげに笑いながら私の周りをぐるぐる回る。
兄様の精霊さんだとわかったらホッとしたけれど、今なんて言った?
魔力がまとわりついている?
ってことは、ユベールが出掛けに『母がいつもやってた』っていう怪我をしないようにっていうおまじない、あれがかかっててそれに犬が反応している?
ユベールの犬嫌いは、絶対にアイツが関係していると思う。
『それにしても珍しいわねえ、あれはね、精霊の
「せいれいの、なりそこない」
『そーよ。アタシたちってねえ、意思のある精霊になる前段階があって……それを持って行って人間が活用したりするのよねえ。魔力の塊だかなんかでなんだっけなー? あは、忘れちゃった! 興味ないもん!!』
「それ大事なとこぉお!」
精霊さんは気まぐれだ。
だけどまあ、精霊? に似たようなモノだってのはわかった。
人間が使うって言葉がかなり不穏な気配しかないが、ええと、だからってこの状況、どうしたらいいのだろう。
「パル兄様、オルクス兄様がこっちに来るの! だからね、この部屋を今すぐ結界で覆って!」
「あア!?」
「結界魔法で攻撃弾けたんだから、閉じ込められるよ! あいつこっち見てるもん、ずっと!!」
「チッ……」
あくまで仮説なのでわからないけども。
私は見えるけど対処できない、対処できるであろうパル兄様やグノーシスたちは見えない。
よって今この場でできる対処は、襲われないようにすること。
その一点だと思うのだ。
そしてあれが精霊の種? を使った
どうよ、私だってちゃんと頭使えばこのくらい考えられるんだから!!
私が必死になりつつドヤ顔でそう告げるのを見て、テトが「かわいいねえー」とマイペースに頭を撫でてきたけど、今そのタイミングじゃないと思うよ。テト。
**********************************************************
※56話でシスター・ルーレの発言に「数ヶ月前からいる」という形になっておりましたが
「数ヶ月前にこの教会に移された」「二年前に事件に巻き込まれた」と修正しています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます