第五章 私にできること

第41話

 魔国からのお客様の存在は、魔力が大きいからなのか魔法使いたちにはなんとも言えない気配がするんだって。

 私は見える・・・から遠くても『目立つ色してるなあ』って感じだけど。

 気配? わからないですね……。


 でもそういう理由で考えるとシエルも魔力が強いから鳥になっちゃうっていう鳥人族だから、彼らの気配を感じているんじゃないか? ってアル兄様は心配していた。

 そう、心配になるくらい、シエルは怯えている。


 カタカタと震えながら、私の部屋の隅にいる。

 私がいる時はくっついてる感じで、普段なら可愛いで済むこの行動はとても心配でならない。


 最近は食事の量も減っている気がする……だけど、クラリス様たちの捜索も難航しているらしく、まだしばらく王城内に留まると思うとどうしようもできない。


「シエル、あのね。今日はね、魔道具をアル兄様にもらったんだ」


「……ほー」


「あのね、シエルは聞きたくないだろうけどこっちは魔国の魔道具。空気中にある魔素を取り込んで、装着者が使う魔法の威力をあげたり負担を減らしてくれるんだって。私用に負担を減らす方でアル兄様が調節してくれたの」


 キラキラとした、ネックレス型の魔道具。

 宝石みたいな部分に複雑な魔方式が刻まれているらしく、本当はブレスレットみたいに身につけるそうなんだけど……私には大きかったんだよね。

 五歳児だと大人しくつけてられないってことが前提なのかもしれない。


「それでね、こっちの髪飾りに新しく飾りが増えたの! これね、防御の魔道具なんだって」


「ほー?」


「私ね、弱っちい回復魔法しか使えないし、魔力少ないけど。でもシエルのことを癒やしてあげられるよ。守ってあげられる」


「……ほー」


 この増幅の魔道具がどれほどの耐久性があるかについては魔国からの報告書を信じるしかないとのことだけど、まあまあ使えるようだ。

 さすがに他国の皇族に渡すものだけあって危険性は少ないようだし、当面は私が使いながら経過をこまめにチェックした上で、帝国での有用性について考えるみたいだね。


 といってもやはり帝国では魔道具に頼り切りってわけじゃなくて、合ったら便利だよね程度の扱いでしかない。

 この増幅の魔道具については扱いが今後も難しくなるんじゃないかってパル兄様は言っていた。


「ヴィルジニア」


「あれっ、シアニル兄様! えっ!?」


「くくくるっぽー!?


 私の部屋、五階にあるんですけど!?

 ひょっこり顔を覗かせているけどどういうことなのかと私もシエルも大慌てだったが、護衛騎士たちも大慌て。


 シアニル兄様だけがいつも通りの表情を浮かべた上で当たり前のように窓から入ってくるもんだから、この自由人さんめ!


「に、兄様どうしたの。どうやって来たの」


「土の魔法で階段つくって登ってきた」


「ええ!?」


 窓の外を見れば確かに私の部屋まで壁に階段ができているではないか。

 それも下から順番に消えていく。

 不思議な光景だがそんなことやってよく下にいる警備の騎士たちに止められなかったな……いや、騎士たち『が』止められなかったのか。


 シアニル兄様も皇子だからね!

 止めるなって命令されたら騎士たちも困っちゃうよね!


 室内にいたグノーシスが達観した目をしていたよ!!

 ごめんね、うちの兄様が……。


「第四皇子殿下、騎士たちが困りますので今後このような真似はお控えいただきたい」


「うん、わかった」


 本当にわかってるのかなあ!?

 シアニル兄様って何を考えているのかよくわからないんだよなあ……。


「今日はね、ヴィルジニアとシエルにお土産。美味しい果物手に入ったから」


「えっ、あ、ありがとう……?」


「はいあーん」


「むぐう」


 ノータイムでお口に突っ込むのはよくないと思います!

 でも甘くて美味しい。


 モグモグと私が租借する横で逃げようとするシエルも口に果物を突っ込まれていた。


「多分ね、近日中に例のオヒメサマがヴィルジニアをお茶に誘うよ。オルクス兄上が同席する」


「それ、むぐ」


 だから喋らせて!?

 無表情だけどシアニル兄様はとても楽しそうだった。


 餌付けって……もうちょっとこう、優しいもんじゃなかったっけなあ……。

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