第四章 魔国からのお客様
第31話
さて、私は五歳である。
五歳にしては賢いと言われるのもまあ当然、前世の記憶があるからであって……元から天才とかそういう話ではない。
兄たちのように期待されても困るのだよチミィ!
とはいえ、皇女という良い身分を得ての転生なのである意味チートである。
その上継承権争い等ないどころか兄たちからも溺愛されているので、かなり……いやなんていうか……むしろ大変だ。
「兄様」
「この予算案はだめだ、突き返せ」
「兄様」
「……そうだなこの治水工事に関しては一度現場に人をやるべきか……アルの魔道具が役に立つだろう、あいつに行かせろ」
「兄様!」
何故私の定位置がヴェルジエット兄様の膝の上なんだよオ!!
そう、長兄の頑張りのおかげで妃たちとその取り巻きによる権力争い(?)が少しばかり穏やかになって、私が自由に出歩けるようになったのは大変喜ばしい。
ついでにいうと兄様の婚約者、十四歳の美少女と会うこともできて関係は良好、人見知りなところがきゃわわだったぜ……将来的にも家族間は問題ないね!
いや、人見知りの兄と人見知りの婚約者って会話成立すんの? って別の心配は浮上したけれども。
そんな中で兄たちが私を構い倒す日々ですが、兄は兄でも長兄と次兄はまあ忙しいわけですよ。
皇太子とその補佐だからね!
他の兄様たちだって忙しくないわけじゃないのよ?
お仕事の割り振りがあったり、行事とか皇族が足を運ばなきゃいけないところへの慰問とか……でもまあそれらを統括すんのが皇太子の役割らしくてね。
で、兄様たちの手が空いている時に私を構ってくれるのは嬉しい。
正直とても嬉しい。
可愛がってもらえる妹ポジション最高である。
だがそれに対してヴェルジエット兄様の不機嫌度が増していくのだ。
そうなると可哀想なのは魔力が漏れ出た影響をモロに受ける側近の方々!
というわけで、最近の私は度々オルクス兄様に拉致られて何故かヴェルジエット兄様の膝の上で歓待を受けるという恥ずかしい事態に陥っているのである。
側近の人たちにも最近は微笑ましいんだかありがたがられているんだかとても微妙な気持ちだ。
「姫様今日も可愛らしい」
「いつもありがとうございますー」
「いてくださるだけでとっても助かりますからね! あ、お菓子食べますか? これ今帝都で流行っているんですよ~」
やめろ餌付けすんな! もらうけど!!
兄様もそれを羨ましそうにしないの!
とまあこんな生活なのだ。
だがおかげでわかったこともある。
兄様のように政治的なことは私には無理だなって。面倒くさいもん。
かといってオルクス兄様のように秘書的な役割と同時に皇子として皇太子の代行をやるような能力もなければ、パル兄様みたいに盗賊の掃討戦は無理。
アル兄様のように開発するような頭脳もなければシアニル兄様のように芸術センスがあるわけでもない。
カルカラ兄様が今のところ騎士を目指しているという点では私と同じくまだこれからってところなんだろうけど、それでも何歩も先を行っている。
(……あえて役立つとするなら、パル兄様にくっついていって治癒のお手伝いか……でもそれまずパル兄様がいい顔しないんだよなあ)
一度提案してみたんだけど、パル兄様から『あんな連中のところに連れて行けるか!』って言われたんだよな。
カルカラ兄様も応援しに訓練場行こうと思ったら『ヴィルジニアによからぬ考えを持つやつが現れたら大変だろう?』ってよくわからない圧をかけられたんだよね……。
我、五歳ぞ?
どういう心配してるんだ、本当に。
まあ誘拐とかそっちだとはわかるけど……最近兄様たちが「ヴィルジニアの婚約者選び」になんかアレコレ動いているのが気になってしょうがないんだよなあ!
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明日からの「末っ子皇女」の更新ですが、一日一回になります(時間は18時頃を予定しています)
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