第27話
いけるいける。
だって私ったら可愛い幼女ですし、妹ですし。
兄だってそんな私を前にこの間のことを父様から何か言われたようだし、きっと仲直りできる。
……そんな風に思っていた時期が私にもありました。
(き、気まずい……)
パル兄様に相談して一緒来てもらって兄二人に面会を申し込み、対面したのだが……挨拶しただけで会話が、ない。
ないのだ。
「あ、あの……ヴェルジエット=ライナス兄様、オルクス=オーランド兄様……」
「……なんだ」
「その、この間は申し訳ありませんでしたあ!」
ええい、ここはやはり私から行くべきか! 行くべきだろう!
そう意気込んで思いっきり頭を下げる。
テーブルに頭をぶつける前にパル兄様が襟首を掴んで止めてくれた。
さすが気遣いのできる男は違う……!!
「勢いよすぎだ。これ以上馬鹿になったらどうすんだ」
「馬鹿じゃないもん!」
この間は頭が悪くないって褒めてくれたのに!!
見事なまでの手の平返しに私は思わず頬を膨らませてしまった。
それを指で潰しつつ、パル兄様が笑う。
「なあ兄貴たち、こんなチビに頭下げさせたかったわけじゃねえんだろ。あんたらはいつもそうだ。頭が良すぎて俺らじゃわかんねえこともたくさんあるが、言ってくれりゃ済むことを省くから誤解される」
「誤解など」
「されてんじゃねえか、思いっきり。いい加減オトナなんだし、そこをわかってなんかアクション起こすかと見守ってりゃコイツのご機嫌取りにぬいぐるみだの菓子を用意するだの……親父と同じレベルじゃねえか」
「えっ、そうなの」
兄様たちからの面会申し込みがあったとは聞いていたけど、ぬいぐるみや菓子をこのコワモテ長兄が持っていたのかと思うとそれはそれで見たかった気もする。
「相手の好みも考えないで貢ぎゃなんとかなるって考えは良くないと思うんだよ、こいつの教育上」
「そういう問題だったの!?」
「当たり前だ、親父がお前になんでも買い与えたりするしお前には後見がいないから窘める人間もいねえだろうが」
「……デリアとシズエ先生がいるもん」
「あの二人が親父のすることに反対意見なんて言ってみろ、物理的に首が飛ぶ」
「ひえ」
確かに普通に考えたら『母親を亡くした娘にできる限りのことをしてあげたい父親』が溺愛でなんでもかんでも与えているのはだめな子製造機だよね。
今のところ私が前世の記憶持ちだから自制とか、やりすぎだなあって父様を諫めることができているだけで、そうじゃないただの子供だったらと思うと確かに困るかもしれない。
「ヴィルジニア=アリアノット」
「はい!」
「兄上、顔が怖いことになっています」
低く唸るような声に思わず肩が跳ねる。
長兄が睨むような目でこちらを見ているもんだから、やっばぁい怖ぁいという感想しか出てこないが、オルクス=オーランド兄様が見かねて間に入ってくれた。
「その、ヴィルジニア=アリアノット。わたしのことはオルクスで構わない。……お前のことを邪魔だなどと思ったことは、一度もない。誤解をさせて済まなかった」
「……オルクス兄様」
「あの時は部下たちが休憩しても自身の休憩を取らない兄上を休ませたいことと、他の弟たちがお前と仲良くなっている姿を見てやきもきしているのを見かねて強引なことをしたと反省している」
「んんん?」
「おい、オルクス……」
「ヴェルジエット兄上はこの通りの見てくれで図体はデカいし顔つきも恐ろしく、魔力が多すぎてだだ漏れな為に大半の人間に避けられるタイプなんだが、中身はとても小心者で人見知りなんだ」
真顔でとんでもないディスりを始めた次兄のその言葉を聞きつつ、私はヴェルジエット=ライナス兄様に視線を向ける。
居心地悪そうにしながら、私と目が合ったヴェルジエット=ライナス兄様は目を逸らす。
その耳は、真っ赤だった。
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次は12時更新です~
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