第24話
その後もアル兄様によって『鳥人族』というものについて教えてもらった。
魔力で体を変化させるとされているけれど、その理屈はわかっていないらしい。
そして変化できる鳥は一人に一つ。
シエルの場合はフクロウだ。
知能や嗜好は人間のままだけど、言葉は喋ることができないらしい。
「えっ? じゃあなんで鳴き声が安定しないの?」
わざとかと思ってたんだけど!
それについてはアル兄様も首を傾げていた。
やっぱりなんでもかんでも情報が少なすぎるんだとか。
とりあえずシエルにイエス・ノーで答えてもらった所、自身が『鳥人族』であることは知らなかったそうだ。
それからシエルは男の子。
年齢は十歳。私の五つ上だった。
なるほど、だから私が抱きついたりするのをいやがってたのか……。
ごめんね恥ずかしかったんだね!!
美幼女とはいえ女の子相手にどう接していいのかわかんなかったのかあ。
って違うな、おそらくは正体がバレた時に皇帝が溺愛する娘に抱きつかれていたとかそういう理由だけで父が断罪とかしそうだからだな。
うん、あの溺愛方向はいろいろヤバいからね……。
(私も軽率に抱きついちゃったりしたしなあ)
よくよく考えるとあれこれ愚痴を言ったり未来の婚約者に求めることや自分は可愛いからいける! とかシエルの前で言っていた気がする。
(これはいけない)
アル兄様はロッシとデリアにも口止めをして、帰って行った。
まあ父様が問い詰めれば答えるだろうけど、基本的に私のペットについては誰も気にしていないから念のためって感じだと思う。
デリアたちにも下がってもらって、私はベッドの上に座ってぽんっと私の前にクッションを置いてそこを叩いた。
「シエル、ここ」
「ほーう」
「こ・こ!」
多分都合の悪い話をするんだとわかっているんだろう、シエルは知らんぷりを決め込んでいたが私が引かないとわかるとしぶしぶ止まり木から下りてクッションの上に乗っかった。
「シエル。いーい」
「ほう」
「……これまで勝手に抱きついたことはごめん」
「ほう」
「でも時々モフりたい」
「……」
「そこは応じて!?」
「……。……ホーウ……」
かなり間があってから応じてくれた。
一応もしかしなくても一宿一飯(?)の恩は感じているのだろう。
十歳ともなればあれこれ考えていたっておかしくないし、苦労しているみたいだし……。
「シエルが元の人間に戻れるよう、私も調べてみるね。……それでね、あの」
「……ほう?」
「あの。兄様たちのお話や、私が婚約者に夢見てる発言してたの、内緒ね……?」
言っていて大変恥ずかしい。
だって兄様たちがカッコイイ、素敵だったって散々言っちゃったんだよね。
その上あの兄様たちの妹なんだから私だってやればできる子! とか。
いつか婚約者ができたら、いっぱいおしゃべりしたいなとか、まさしく夢見る乙女がごとくデートプランなんか語っちゃったこともあるんだよ!
是非忘れていただきたい。
「……」
「シエル?」
私のお願いに、何故かシエルは無反応だった。
それどころかジト目ではないか。
「えっ、なぁに?」
私はそんなに変なことを言っただろうか?
いやそりゃ幼女だって夢くらい見るってば。
「ゆ、夢見たっていいじゃない……」
ぷうぷうと文句を言ってみるものの、相変わらずシエルは無反応である。
お前皇女のくせに何いっちゃってんだとでも思っているんだろうか?
甘やかされて育った幼女はお気楽でいいなとか思ってたり!?
それはそれで傷つくんですけど!?
「いいもん、立派なレディーになって婚約者に溺愛されてみせるもん……」
「……」
「あっちょっ、何! なによう、シエルぅう」
不貞腐れてシエルに対抗するつもりでレディー宣言をしたら軽く噛みつかれた上に頭に乗っかられてしまった。
とても重い。
「どいてよ、シエルう……」
「ぷぎゃー」
どうしよう。すごく馬鹿にされた気がした。
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