第23話
「獣人族は僕のように先祖返りで獣要素が多く出てしまう以外は、基本的に人間族とほぼ近しい姿だろう? 鳥人族は違うんだよ」
「どう違うの?」
「鳥人族は、人間族と見た目は同じなんだ。違うところは体内に豊富な魔力を持ち、それを使って変身する」
「へんしん……」
「そう。それも完全に鳥の姿になっちゃう、希少種なんだ。だから獣人族よりも魔族の方が近しいんじゃないかって言われているんだけど……あ、魔族についてはやった?」
「はい。海を越えた大陸に住む、魔素の濃い土地で生まれ育った、魔法国家ですよね?」
「そう。ヴィルジニアはよく勉強しているね、お利口さんだ」
「えへへ……」
撫でられるとすごく嬉しい。
前世での私は、幼い頃にあまり褒めてもらった記憶がない。
頭を撫でてもらったり、抱っこしてもらったり……憧れだった。
だからついつい『抱っこ!』っておねだりしちゃうんだよね。
今世で、シズエ先生はよく言葉で褒めてくれるけど、アル兄様もパル兄様も、一杯なでてくれるのだ。
カルカラ兄様は最近ようやく抱っこに慣れてくれた模様。
シアニル兄様? 唐突に来て抱っこしたりほっぺにちゅーしてきたり、相変わらず自由人ですが何か。
おっと、話が逸れた。
「それでね、ここからが問題なんだけど……シエル、もしかして君、人の姿に戻れなくなってしまったんじゃないかな」
「ホホホホーウ!!」
「うわびっくりした」
アル兄様の問いかけに大きな声で鳴いた上に首をぐりんぐりん回すシエル。
ちょっとそれどういう反応なの……?
「うん、あのね。鳥人族ってそういう珍しい能力を持っているものだから、迫害されたり珍しがって人身売買の憂き目に遭った過去があってね……種族そのものが今では幻って言われるくらい少なくなっていて、正確な人数が把握できていないんだ」
見た目が人間族そのものだから、彼らは自分たちを守るために種族欄を『人間』として提出しているためどれほど鳥人族がどこの国にいるのか把握ができないのだそうだ。
今でも鳥人族とわかると高額の高値で奴隷にしようとする悪い人もいるらしく、この帝国でも頭を悩ませる問題の一つなんだとか。
「そういう珍しい種族だからこそ、近くに教えてあげられる人も頼れる人もいないんだよね。鳥に変化できるということは、諜報活動なんかにも重用されるから……国に囲われてしまったケースもあって、彼らはあらゆる意味で他人を信頼しないって話なんだ」
「うわあ」
そういう感想しか出てこない。
だが、なるほどそういうことならいろいろと納得ができた。
「シエル、どうなの?」
「ほーう」
「いやどっち」
異常に賢いことも、やや普通のフクロウよりも(多分)大きいところも。
食事に選り好みするところも、お風呂一緒に入るのを嫌がったり私の言葉に対していいリアクションを取るところも。
「シエル。もし君が鳥人族だったとしても、ここは安全だ。少なくとも僕とヴィルジニアは君を害するつもりはないし、ヴィルジニアが望む限りは皇帝陛下も君に無理を強いることはないだろう」
「……ほーう」
「それを踏まえて聞くのだけれど」
アル兄様が少しだけ困ったように、私を見た。
うん? その視線はどういうこと?
「危ない目に遭って追われて、鳥になってしまったのかな?」
「……ホーウ」
「初めての変化だったんだよね、多分。……だとすると、戻る方法がわからない、のかな」
「ホーウ」
「ああ、やっぱり……」
シエルが意を決したようにアル兄様の言葉に応える。
なるほど、アル兄様が私に気を遣ったのはそういう人狩りみたいなことを幼女に聞かせていいか迷ったのか。
だけど、それ以上に問題があるらしい。
兄様は大きなため息を吐いて告げた。
「実はね、シエル。本当に申し訳ないのだけれど、鳥人族があまりにも秘匿された種族すぎて……変化に関しては何も情報がないんだ」
「くるっぽう!?」
シエルがショックを受けて鳴き声が鳩に戻ってしまった!
***********************************************************
次はまたお昼の12時頃更新です
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます