第10話
あれから二年が経過した。
その間に私は少しずつ、本当に少しずつ周りのことをシズエ先生から教わった。
今いる六人のお妃様は全員帝国の外からお迎えした人たち。
属国だったり、友好国だったり……まあそんな感じの政略結婚。
うちの母親だけが国内貴族らしいけれど、身寄りもない家だったので母の生家はお取り潰しとなったのだそうだ。世知辛い。
つまり、私のみが純帝国人。
しかも哀れにも母親を失って、後ろ盾すらない状況。
(やっばいやつじゃん、これ)
まあそういう理由もあるから父が私を溺愛しているのかもしれないけど。
そうか、後ろ盾がないから部屋もわりかし質素だし侍女も数人で乳母もおばあちゃんなのか……後ろ盾がしっかりしていると、資金も潤沢にあってまわせるってことだもんな。
私の護衛騎士たちも皇帝直下の近衛騎士隊から配属されているってエリートじゃねえか。
(……まあ、兄たちにとって私自身は脅威ではないってことか)
ただ後ろにいる父の存在があるから、そういう意味では脅威。
うーむ、仲良くなる方法を誤ると手駒にされるパティーンもワンチャン?
ラノベで見ていたようなドロドロのことは想像ができるけど、自分がいざあの立場で十重二十重と策を巡らせられるのかと問われたらはっきり言おう。
無 理 。
いや無理だろどう考えても。
多少特殊環境で育ったとはいえ平和な日本で暮らしていたんだぞ!
その中でもごくごく一般人だった私に多くを求めてはいけないと思うんだ。
料理だって最低限できますけど一人暮らししてからはもっぱらレトルト食品フル活用ですよ、一人だと便利なんだよ。
実家にいた時はレトルトなんてとんでもないとか家事もしない母親に言われておりましたのである程度はやれますよ、でも家庭料理レベルなんでね!
いくら前世の記憶があろうが前世だって小娘の域を出ないままなんですよ。
しかもそんな人の顔色見てやりとりなんて……まあある程度保身に走ることは得意だ、任せろ!
でも多分違うそうじゃない。
ちなみに洗礼を受けて発表が行われたけど、結局まだ兄たちはおろか他のお妃様にも会えていない。
慣例なんだそうだ。面倒である。
で、私の才能に関してだが回復系に素養があるようだ。
ただし大きなものではない、という。
出たよ中途半端……!
(前世の自分とまるで変わっちゃいない……!!)
決して悪くなく、良くもなく。
努力すれば認めてもらえるが、そこに辿り着くまでの苦労はできる人の二倍から三倍っていうね。
この世界では回復系の能力も珍しい話ではないらしいので、聖女って呼ばれる日が来ないことだけは確定した。
シズエ先生は『そもそも皇女というお立場である以上、さほど魔法を使われることもありますまい』って微笑んでたけどさ……より嫁がせる以外、役割がなさそうになっただけなんですけど!?
「どうしたもんだろうねえ~、シエル……」
「ほーう」
「うんうん、最近フクロウらしく鳴けるようになってきたねえ、その調子で頑張るんだよ」
「……ほーう」
褒めたのに、シエルから不満そうな視線を向けられた。解せぬ。
まあとにかく私は皇女として、せめて礼儀作法をしっかり身につけて、いずれ出会うであろう婚約者と良い関係を築けるよう頑張ろうではないか!
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