第6話 僕が辛いんじゃなくて、辛い記憶が再び襲って来ることが怖い
働き始めてからまだ1ヶ月経った頃にかな。
色んな人に付いて色々介護について学ぶ頃に起きたパワハラがあった。
それは僕にとってはとても大きなパワハラのひとつだった。
ちなみにパワハラは4月と5月に2度あります。
僕が受けた1度目のパワハラは周りからしたら、『へっ、こんなこと?』って思うかもしれません。
ただそのパワハラは仕事を辞めた今でも時々思い出して、心が苦しくなります。
その元凶が園田雄一先輩でした。
僕よりももっと年齢の高い人で、自分が人のことを傷つけてる自覚のない人でした。
そして、彼は他の職員から嫌われてる人でした。
パワハラがあったその日は僕は日勤として、大体8時半から18時までのシフトでした。
それで、パワハラが起きた時刻は10時半前後でした。
園田先輩と僕が見守りという利用者さんが転倒しないように見守る業務で一緒になった時に言われたことです。
園田先輩は言いました。
『宇田さんはさ、どこの大学出てるの?』
『鷹野大学です』
『へー、良い大学出てるんだね』
すると、園田先輩は笑いながら言いました。
『じゃあ、そこで何を学んだの?』
『社会情報学を学びました』
『何それ?それってここで何か役に立つの?立たないよね?〇〇さん(利用者さん)もそう思うよね、ねぇ〜』
僕は作り笑いを浮かべて『ハハッ』と笑いました。
そこで、泣いてはいけない。『泣くな、自分』と言い聞かせて今あったことを全て飲み込んで、泣くのを我慢しました。
首元が熱くなるのを感じながら、利用者さんのために昼ごはんの準備を他の職員さんと準備しました。
そのあと僕は今日のことを日報に書いた覚えがあります。
日報を見てくれる担当職員さんがいて、その人がコメントを色々くれるのですが、その日に僕が書いた日報を全て見てくれたみたいです。
その日に書いた日報の中で僕は園田先輩から言われた内容を一言一句間違えず書いた後に『とても心がえぐれた』と書いた気がします。
そのあとかな。
上司の野々江さんにA4サイズの紙に今までの自分がされて、嫌なことを紙に書いて渡したのは。
それから、改善すると言ってはくれたけどパワハラがあった事実を内密にしてくれることはなくて、次の日ウズノ老人ホームに行ったら、フロア全員にその事実が知られてて僕はすごく恥ずかしかったのを覚えてる。
上司は園田先輩とは絶対に一対一にしないと言ってくれたのに、その日に限って他の先輩に言われた。
『宇田さん、10時のお茶よろしくね。私は下のフロアにいるから』
そう言われて、僕は10時のお茶を頼まれたけど、隣には園田先輩がいた。
信頼してる崎田先輩には『ここに無理に居なくてもいいからね』と言われていたけど、刻々と10時の時間が近づいて来るととも園田先輩が怖くなった。
仕事を任されたのだから、やらなければ行けないのに身体が思うように動かなかった。
そのうち、冷や汗や平衡感覚みたいなものが狂ったみたいだった。
僕はたまらず園田先輩に言った。
『すいません、トイレ行ってきます』
そう言って、誰もいないステーションのトイレで僕は自分に大丈夫と言い聞かせてた。
だけど、僕は園田先輩のいる利用者さんが集まった場所にどうしても戻れなかった。
職務放棄はいけないことだって分かってた。
でも、もうどうしようもなかった。
その時誰もいないステーションのなかで、耳元から聞こえるはずのない母の声がしたような気がした。
母が『嫌だと思ったら逃げなさい。逃げても良いんだから』と聞こえた。
その声が合図のように僕は持っていたピッチという携帯のようなものを置いて、裏口から施設長やケアマネジャーさんのいるところまで、階段で降りて行った。
そして、その日から僕は1週間ぐらい休んだ。
帰りますと10時のお茶を頼んだ先輩には申し訳ないと思ったが、僕はもう居られなかった。
帰りの電車の中で僕は施設の人には申し訳なかったが、僕の心はそこで壊れ始めていたのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます