第6話 田部
「怠惰かー。それはしゃーねーなぁ。それで、今日コンプリートしてしまった、七つの大罪のオマエの友人は後何人になる?」自分を怠惰の象徴と言われてなお、オレは話の続きを促した。こうなったら、最後まで聞きたい。
友人をそれぞれ七つの大罪に当てはめる福呂の感性はどうかと思うし、7をアンラッキーの象徴のように思っている癖に、7にただならないこだわりを持っているようにも見える。7は福呂にとってはアンラッキーナンバーで、一日の内に七つの大罪を象徴する友人全てに会ってしまうととんでもなく験が悪いというジンクスは馬鹿馬鹿しくも面白い。次に出てくるのはどんなヤツだ?
「あと二人、次は
「あー、うん。確か、基礎クラスで一緒だったような気がする。とらたろうで、コタローだったよな。虎というより豚みたいなヤツじゃなかったっけ」オレは田部の顔を思い浮かべて言った。
「そうそう。ソイツソイツ。そいつとさ、この食堂で会ったんだよ」
「へぇ。このアナグラVIPで?」
「いや、その時は違うトコに座ってた」
「ふぅん。それで、そうか。田部は暴食、だな?」
「ご明察。って、これは分かりやすいよな。見たまんまだし」
「いや、まあまあ失礼なアレだよ。友人を七つの大罪に当てはめるってのは。オレはまぁ、怠惰そのものだし、いいんだけどよ」ノート神に対しては卑屈であってもいい。ノート神を一人失えば、オレは怠惰な学生生活を送れなくなってしまう。
「いや、分かってる。分かってるから。だから、オマエ、コレ、誰にも言うなよ?」福呂はオレに念を押してくるが、こんな事、言える訳がない。言えたとしても、八木が部室でヤッてたというエピソードをちょっと誰かに漏らすくらいだ。
「あぁ。言わない」
「田部もさ、さっきのオマエと同じようにトレイを両手に持って近づいてきて、オレの正面に座った訳だ。そして、トレイの上にはご飯と八宝菜」
「8じゃん。7じゃないじゃん、8じゃん」
「そして、その横に7UP」
「え、7UPって、あの甘いジュース? 甘い炭酸ジュースと白飯と中華? バカ舌なの?田部って」
「知らねーよ。バカ舌なんじゃねーの?それを見て、オレは『また、7かよ。いい加減にしてくれよ』と思った訳。『でも、八宝菜には8がある。なんか、ギリセーフ』とも思ったんだ」
「なんか、よく分からないけど、そうか」
「ところがだ。田部のヤツ、八宝菜の具材を数えだして、『白菜、イカ、椎茸、タケノコ、にんじん、豚肉、ベビーコーン……、七種類しか入ってない!これじゃ
「ぶふっ!」オレは思わず噴き出した。そこから出てくるかー、7。
「八木に昼寝の場所を奪われて、食堂に来てみれば、コレだよ。どうせ食堂に来るなら、コンビニなんて行かない方が良かった。食堂でコンビニのパンを食うって意味分からん」不貞腐れた顔で福呂は言う。
そうだな。コンビニに行かなければ猿川の怒声でイヤな思いもしなかっただろうし、素直に食堂に来ていれば、見たくもない八木の半裸も見ずに済んだだろう。
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