8.機械にも、人間にもね。
「ふふふ。これはねぇ...」
「まだ名前も付いてない、実験段階の試作品を盗み出してきたんだぁ」
「へー...弾とか出るの?」
「うわあ!ちょっとダメだって!めっちゃ危ないんだからこれぇ!」
「えー...」
見せるだけ見せておいて触らせてもらえないとは思わなかった。
よくわからないが余程危険なものなのだろう。
呆気に取られている私を他所に彼女は『アレ』の説明を続ける。
「これは」
「反乱を起こしたアンドロイド達を鎮圧するために開発中だったらしいんだ」
「ひどい話だよねぇほんと」
「だからこれは、アンドロイドには使えない。」
「人間にしか撃てないように作られてる。」
「それで、ここからが重要だからよく聞いて欲しいんだけど」
「それはこの身体も例外じゃないってことなんだよねぇ」
なるほど。もし私がこの身体を捨てて、代理形成体へと容れ物を乗り換えたら、その時『それ』は使えないということだ。
「だからもし」
「君が身体を代えて生きるという選択をするなら」
「この身体を取り戻しに来る人達が君の前に現れるかもしれない」
「その時、君の代わりに『これ』の照準を定めて、引金を引いてくれる『人間』が必要ってことになる。」
「君の為の、『射手』だねぇ。」
さぁ、当てはあるかなぁ?とでも言いたげな目でこちらを見てくる。
今後私が生き残る為に、既に誰か一人が巻き込まれることが確定しているってことか。
「どうする?決まった?」
「えっ」
「今決めなきゃだめなの?」
「そうだねぇ。」
「この身体を君に渡す前に、誰かに壊されたりしたら」
「私は私の役割を全うできなくなっちゃうしねぇ」
「もし私の魂が、その身体に入ったら、君はどうなるの?」
「私も考えてたんだけどねぇ」
「わかんないや。」
「上書きされちゃうかもねぇ...」
「一つの身体につき、一つの魂」
「みたいなルールがあるかも。」
「そんな...君はそれでいいの?」
「いいよ。私は、私の役割を果たせればそれで。」
「この人格だって君のコピーでしかない。」
「まぁ人間とは違うしね。こんな風に喋ってはいるけど、機械とそう変わらないよ。」
「ただ、覚えておいてほしいんだけど」
「『役割』はそれぞれにある、と思う。」
「機械にも、人間にもね。」
彼女に役割があるように、私にも役割があるということなんだろう。それが何かは未だ見当もつかないが。私は彼女の身体を貰って生き長らえて、
それで役割を果たすことは出来るだろうか。
いや、そうだな。これは出来るか出来ないかの話ではないんだ、きっと。
「いいよ。」
「私が生きるために、君の身体を貰う。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます