4.旧校舎の窓辺に女生徒が

「もうあんまり長くないかも」

「ごめん」

「黙ってて」


普段は意味ありげな話をさも他人事のように、

どうせ中身なんてないんだろうと思うような話を

それはそれは大切そうに話す彼女が突然私を呼び出すものだから、何か面白いことでもあるのかと思って行ってみればそう言われたのが半年以上前のお話。それからは一言も話してない、と思う。

言いたいことは色々とあったはずだが

さすがの私もその時ばかりは頭が真っ白になり

、それから暫くの何日かは頭が真っ白のまま過ごした。彼女がなぜ「もうあんまり長くない」のかも分からないというのに、それでもどうすればよいかわからないまま彼女を遠ざけ半年が過ぎるのは一瞬だった。このまま頭を真っ白にしたまま全てが終わるまでを過ごそうとしていたのかもしれない。

このまま何もしないのは良くないと思いとりあえず副会長になってみたりもしたが、副会長になったということ以外で特に変わったことはなかった。気を使っているのか本人からの接触も全く無いまま半年は過ぎていった。

夏休みも後半に差し掛かろうかというあたりで、ついに私は自分から働きかけなければ何も起こりはしないのだと悟る。夏休みは素敵だ。

夏休みが明けたら全てを話すんだと心に決めて二学期初日を迎えたが、当の本人は欠席ときた。

あぁこれはもうだめなやつかと、半ば諦めの気持ちとともに何日かを過ごした時だった。

副会長という仕事柄、生徒の情報は耳に入りやすい。聞くところによればなんと彼女は失踪したらしい。もう長くないんじゃなかったのか。まぁあの彼女のことだから何も不思議な話ではない。捉えどころのない性格なだけでなく、学校や家ですら彼女を留めておくことは出来ない。なにものにも囚われない、それをよしとしない彼女が好きだったなぁなんて思ってしまったが最後、いままであまり深く考えすぎないようにしてきたがそれでもその日ばかりは私も限界で、三日三晩は泣き続けた。結局のところ私に出来ることなど特になく、「もうあんまり長くない」ことを早めに受け入れ、残る時間をいつも通りに過ごすのが一番よかったのではないかと思った時にはもう失踪している。こうなればもう私に出来ることは彼女を探すだけだ。しかし見つけ出せる自信は無かった。様々な意味で彼女は私の一枚も二枚も上手だ。本人はそんなこと気にもしていないだろうが。もし本気で居なくなるつもりなら私に見つかるようなミスは侵さないだろう。そして案の定、思いつく限りの方法は試したが今日まで足取りは掴めないままだ。それでも私は最善を尽くすしかない。もう一度彼女に会うことが出来なかったとしても。


それから何日かが過ぎた頃だった。

旧校舎の窓辺に女生徒が立ってるのを見たという噂を聞いたのは。

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