大アルカナの7 戦車の逆位置
竜田川高架線
妹の私にとってはお兄ちゃんは浮気者
妹はタロット占いが好きだ。
俺は占いを信じているわけでは無いが、妹の占いを聞くと、自分を掘り下げるのに良いヒントが貰えるので、よく頼む。
「なるほどね〜好きな人が出来たからどうしたら上手くいくか知りたいと」
妹は78枚のカードを手際よくシャッフルして、一枚のカードを引いた。
「大アルカナ、
それぞれ白と黒の2頭のスフィンクスが引く戦車に戦士が乗っている。ただし2頭のスフィンクスはそれぞれ別の方向を向いており、戦士は手綱を握っていない。
この戦車を手綱も無しに制御するのは難しく、強い意志と腕力を要する。
正位置であれば、この通り力強さや勢いの良さがある状態を表現するが、逆位置であれば、戦車の制御を失い障害に見舞われることを表現する。
「今は恋に目覚めて何かしなきゃって焦ってるけど、そのせいで方向性が定まってないから優柔不断になってるの。デート誘おうとか、付き合おうとかって思って、あれもこれもってやると計画倒れにもなるし。一旦立ち止まって、立ち回りを考えた方が良いよ」
ありがとう妹よ。参考になった。
「それで、誰? 好きになった人って。 え、C組の七瀬さん? 辞めたほうがいいって。可愛いしあざといから男子から人気あるし、勘違いする男子も多いよ。二股してるって噂もあるんだよ? どの道、ライバル多すぎ。お兄ちゃんの性格とも合わないと思う」
そうは言っても諦められないのが男というものだ。
しっかり計画を立てて、丁寧丁寧丁寧ぇ〜に距離を詰めてゴールインしてやろうじゃないか。
次の日。
朝に電車の中で74式戦車がひっくり返って78式戦車回収車にドナドナされたニュースを読みながら登校した。
そして朝から七瀬さんに元気よく挨拶しに行ってたが、その際に男子生徒3人に既に囲まれていた。
昼休みには校内で女子から人気のある男性教師と小会議室に入っていくのを見てしまった。
放課後に話しかけに行った際は「ごめんね急いでるから」と言ってそそくさと教室を出ていき、上級生男子と手を繋いで消えていったのを目撃した。
終わった。
俺の恋は、突撃する前に砕け散った。
妹に血涙を流しながら報告した。
妹は特に驚きもしなければ嗤いもせず、隣りに座ってよしよししてくれた。
妹に抱きつきながらよしよしされるのは兄として情けなくもあるが、俺のメンタルの弱さにとってはどうでも良いことだ。
一先ず、妹がこれから先のことを占ってくれるそうだ。
「お兄ちゃんは私の占いがないと何も決められないものね」
まさにその通りである。
「ほら、ペンタクルの7の正位置。そろそろお兄ちゃんの恋愛観を変えてかないとじゃない?」
恋愛観を変えると言っても、どう変えろと言うのか。
「あ、カップの7の逆位置。現実見ろってさ。もう恋するの辞めたら? お兄ちゃんに普通の恋は無理だよ」
辛辣すぎやしないか、それは。
「あ、ソードの7の正位置」
それはなんぞ
「裏でコソコソ悪いことやってるみたいなイメージ。恋愛で言うと浮気みたいな。ある意味、妹の私にとってはお兄ちゃんは浮気者だし間違いじゃないんだけど」
どういうこと?
「あえて曲解して、今のお兄ちゃんの状況に当て嵌めるとね? 親に隠れてコソコソ妹とイチャイチャするとか……」
何を言っているだお前は。
「妹と恋してみるとか」
本当に、何を言っているんだお前は。
大アルカナの7 戦車の逆位置 竜田川高架線 @koukasen
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