49.「変態でも貴公子は貴公子」
「血塗れ貴公子」ことアルバート・ジャック。
生前の犯行理由は身勝手極まりなく、罪悪感や
「怪異」と化してなお、どうしようもなく尖った性的嗜好を隠しもしない上、あわよくば満たそうとしてくる……要するに、鬼畜なド変態だ。
なるべく触れたくない相手ではあるけど、いずれ、わたしは彼とも向き合わなきゃいけない。……それは、分かってるんだけど……。
「生かしておけない……か。具体的に、何をしてくれるんだい?」
「飛びかかって首の骨を折るッ!!!」
「はぁ……ダメだね。全然ダメだ。即死攻撃じゃ苦痛が足りない」
「嫌がるなら尚更殺らなきゃだね!! 覚悟しな……あっ狙いズレた」
「ああっ、背骨はイイ……っ!」
「ヤバっ! 気持ち良くさせちゃった!!」
……え? この変態と向き合わなきゃいけないの? マジ?
このまま永遠にリナと
「さぁ……もっと痛みを……僕に苦痛を味合わせてくれ……!」
リナに蹴り飛ばされて床に這いつくばり、
「あの騎士くんはこんなものじゃなかったよ、さあ……!」
「よーしそこで首を洗って待ってなぁ!!」
アルバートの挑発にテンションを上げたのか、リナは相変わらずのブリッジ走りでカサカサと移動する。
急速に近づかれたことで、エドマンドの隣のレイラがびくっと肩を震わせておろおろと
何? 何が始まったの?
「エドっさん! アタシ、今日から弟子入りするけど良い!?」
本当に何が始まったの。っていうか何を始める気なの?
「……復讐か」
「そう! 復讐!!」
そうだねペット(?)の復讐だからね。何も間違ってないね。
……って、ちょっと待った!
「リナ、変なスイッチを入れないでくださる!?」
元気がなくて心配とはいえ、せっかく落ち着いてるんだから、めんどくさい方向に持ってかれちゃたまったもんじゃない!!
「……えっと……」
と、そこで、レイラが口を開いた。
あれ? 声が聞き取れる? ……と、思ったら、ニコラスが天井からマイクを吊っていた。
いつの間に? やるじゃんニコラス……。
「その……わざわざ喜ばせてどうするの……?」
「あ、ホントじゃん。ごめんエドっさん! やっぱナシ!!」
レイラの指摘に、リナはあっさりと納得して引き下がる。
エドマンドも元気が出ないのか、血の涙をちょろちょろ流すだけで済んだ。やっぱり凹ませといて良かったかもしれない。いつもなら「リナの代わりに俺がやる」とばかりにアルバートに突っかかってたと思うし……
「承知……。宿命を背負い、業火に
「なんて?」
「た、たぶん……『復讐という業に苦しむのは自分だけでいい』とか、そういう感じ……?」
レイラちゃんがエドマンド語を翻訳できるのは、やっぱり兄妹だからなんだろうなあ。
「……その気高い志は、僕には理解できないよ」
それはそうと、アルバートにも伝わってるっぽいのはなんでだろう。
「君はいつも憎悪のままに僕を切り刻み、僕からも苦痛と屈辱を与えられる。……僕はそれが楽しくて愉しくて仕方がないのに……君は、良しとしていないのだろうね……」
折れた背骨が繋がったのか、ゆらりと立ち上がるアルバート。
黙って成り行きを見守っていたゴードンが、耐えきれずに突っ込んだ。
「いや、当たり前だろ」
「ゴードン。君には聞いていないよ」
にっこりと微笑むアルバートの額には、くっきりと青筋が浮かんでいる。
「君はいつもそうだ。
「……ッ」
痛いところを突かれたのか、ゴードンがぐっと押し黙る。
……そうだよね。アルバートって、賢いし観察力もあるよね。だから、エドマンドの言葉も理解できる、のかな。
じゃあどうして、わたしの時は違うの?
……それとも。
──僕と彼女は同質の存在だ。同質の欲望を抱えた僕には、彼女の痛みと孤独が理解できる!
わたしが、
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