31.「修羅場突入!?」

 ゴードンはわたしの従者だから、わたしこと「レディ・ナイトメア」の格が高ければ高いほど強くなる。それは理解した。


 ……でもさ。

 そもそも、「怪異としての格」って……なに?

 どうやったら上がるの? っていうか、どうやって計測するの?


「ヒヒッ、ジブンの見立てでは……そうやって悩んでる間にみるみる下がってるねぇ」


 ニコラスさーん!?

 焦らせないでくれますー!?


 う、ううーん、わかんない。

 怖い行動を取ればいい……とかかな。相手に脅威を抱かせるような言動……とか……?

 ええい分かんない。時間を稼いでもらって、その間に考えよう!

  

「ゴードンごめん! 全裸になってもわたしは気にしないから、とりあえず持ちこたえて!」

「……別に、勝っちまっても良いんスよね」


 ゴードン本人は何かカッコイイこと言ってるけど……。


「断言しよう。君は僕に勝てない」


 アルバートは余裕そうな表情で、優雅に佇んでいる。全裸のくせに。

 ちなみに、床で寝ているエドマンドにはわたしの力でカーテンを被せておいた。


「さぁ、どこからでもかかっておいで。僕の欲望はそのすべてを受け入れ、力に変えるだろう……!」

「うへぇー……キモい……」


 格好つけたくせをして攻めあぐねるゴードンと、先手を譲る余裕すら見せるアルバート。


 アルバート、最低なドMすぎて逆に最強なんだよね。何か突破口はないかな……。

 

「ほらほら、小手先で時間を稼いだところで、困れば困るほど『怪異』としては弱くなっていくよ」 

「だから焦らせないで!?」

「ヒヒッ、ごめんごめん」

 

 ニコラス……本当に楽しそうだね……。

 ……ん? 待てよ? 格が「下がる」こともあるんだよね。

 ってことは……


 アルバートの格を下げることもできるんじゃ……?


「ゴードン!」

「な、何スか!?」


 ええい。物は試しだ。とりあえずやってみよう。

 とにかく、アルバートを動揺させれば良いんだよね!?


 ゴードンに近付き、頬にキスをする。

 ほ、頬くらいなら、何とか……わたしの情緒も、保てる……!


「が……頑張って……ね?」 


 ゴードンはきょとんと目を見開き、ぱちぱちと瞬きをする。

 ダメだ。やっぱり情緒狂いそう。無理。好き。


「……ッ!!!!」


 まだ状況を理解していなさそうなゴードンに対し、アルバートは端正な表情を怒りで歪める。

 え、そんなに怒る……? もしかしてこいつ、わたしが思うよりずっと本気なの……?


「どうして……どうして君なんだ! 逃げてばかりのくせに! 守ることも、支えることも、認めることもできなかった『従者』ふぜいが! どうして……!」


 ……。

 あれ、これ……やらかしたやつ……?

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