27.「とにかく明るい怪異たち」
ゴードンに手を引かれ、地下室を後にする。
そろそろ、アルバートとエドマンドも落ち着いた
「あ、チェルりんとゴドっちだ」
「────」
……と、並んで歩いていたリナとレイラに声をかけられる。
あだ名、また変わってるんだけど。ってか、這わずに歩いてるリナって新鮮だね……?
「……最近、やけによく喋るよな。お前ら……」
ゴードンがボヤく。それは、確かにそう。
わたしがアクション起こしてからなのかな。リナはモブの「這う女」ってだけじゃなくなったし、レイラちゃんもなんやかんやで自己主張することが増えてきた気がする。
それまでみんな、他の「怪異」に深く関わろうとしなかったしね……。誰かの地雷を踏んだら大変なのは今もそうだけど、地雷原の一つが大人しくなったのってかなり大きいのかも?
……まあ、「
「今広間行かない方がいいよ~ニコおじの演奏めちゃくちゃ盛り上がってる」
「─────」
「ほら、レイちゃんも『ニコおじが激しめのBGM流してる時ってだいたい修羅場だよね』って言ってる」
「──!? ────!」
「え、何、ぶんぶん手ぇ振って。『翻訳ありがとー! マジ感謝!』ってコト!? いやぁ、そんなそんなぁ」
「──!!!」
リナは勝手に解釈してるけど、そのジェスチャーは絶対「違う」って言いたいよね、レイラちゃん。
うーん、やっぱりエドマンドじゃないと翻訳できないみたいだなぁ。確か、レイラちゃんはエドマンドの主君の奥さんで同じく裏切られた組だから、波長が合うんじゃなかったっけ。
……あれ? エドマンドは主君を仲間に裏切られたんだっけ? わかんなくなってきた。
「あ、レイちゃんがアタシの全力疾走見たいって言ってるし、ちょっと踊り場の方行ってくるね~」
「────!?!?!!?」
これはエドマンドじゃなくてもわかる。「言ってない!?!?!!?」だ。
そのままリナに引きずられるようにして、連行されていくレイラちゃん……ドンマイすぎる……。
廊下に気まずい沈黙が流れたので、とりあえずゴードンに声をかけてみた。
「……ゴードン。エドマンドにレイラの言葉がわかるのって、何でだっけ」
「あー、何だったッスかね。歴史の本で読んだことあるんスけど……」
「エドマンドの主君が、レイラの『元』夫なんだよねぇ。レイラの夫が
あー、なるほどね。レイラちゃんが呪った対象と、エドマンドが復讐を誓った対象は同じなんだ。エドマンドは「死人に口なし」として葬られるはずだったレイラの「声なき声」を聴いたからレイラの言葉が翻訳できるし、レイラはエドマンドと同時代に生きて彼の生前を知っているから、エドマンドが何を言いたいか何となくわかる、と……
……って……あれ? この声って……
「びっくりしたぁ! いつの間に!?」
「ヒヒッ、ついさっき来たばかりだよ」
「いきなり背後に立つのやめてよ!?」
「ヒヒヒッ、驚かせようとしたに決まってるだろう?」
うう……ニコラス、本当に趣味が悪い……。
ん? なんか、ゴードンの視線を感じるような……?
「……どうしたの、ゴードン」
「い、いや、何か……お嬢……」
うっ、やっぱり「チェルシーとは別人だ」って思われちゃったかなぁ。そりゃそうだよねぇ。リアクションが全然違う自覚、わたしにもある。
以前のチェルシーなら、そもそもゴードンと首遊び以外に興味を持っていなかったと思うし……。
「な、何でもないッス!」
えっ、何その反応。
何で目を逸らすわけ!?
「キミたち、面白いねぇ! ヒヒヒヒヒッ!」
えー!?
ニコラスさん、何でまた爆笑してるのー!?
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