20.「ウケを狙ってホラーになる女vsひたすら真面目でも面白い男」

「でもさぁ。フツーに這うだけだと面白みないよねぇ」


 四つん這い状態のリナがなんか言ってる。

 これは……伝えてあげた方が良いやつ……?

 

「ブリッジでも面白いわけではないと思いますわ」

「えっ!? 嘘ぉ!!!!」

「そんなにびっくりします?」


 この館を改革するにあたり、陽気なリナは放っておいてもどうにかなる気がする。

 ギャグセンスが致命的なのが難点だけど……。


「うーん……困ったなぁ」

「何がですの?」

「アタシね、ずっとレイちゃんと仲良くしたかったの」


 ……なるほど。友達が欲しかったってことなのかな。

 確かに、こんなじめじめしたホラーな館、一人では寂しすぎるよね。自分と同じ女の子の怪異がいるなら、仲良くしたいと思っちゃうのもわかる。


「だから、レイちゃんを笑わせたいなーって、ずっと思ってた」


 り、リナ……。びっくり要員の変な奴だと思ってたけど、案外良い奴なのかも……。

 レイラがおろおろしながら、扉の影に隠れる。どうやら照れているらしい。……ん? あれ? レイラだけ……?


「……あの、わたくしは?」

「チェルチェル? ぶっちゃけ前はそんなに仲良くしたいと思ってなかった」


 …………………………。 

 普通、そういうことはオブラートに包まない?


「────」

「失礼。『ま、まずはお友達から……』と申されておられる」


 あー! レイラちゃんが混乱してるー!

 可愛いー!!

 でも、リナは後で覚えてろ!!!


「……ッ、我が復讐の道に果てはなく、されど我が刃はほまれを忘れず……」


 まだちょっとしんどそうなエドマンドが、真面目な顔で呟いてるけど……どうしよう。何言ってるか全然分からん。


「────────」

「……む。『エドマンドさん、【騎士としてまもるべきものだけは見失っていない】って言って……。………………この辺りで私は失礼する」


 あ、なんか途中で定位置帰った。照れる感情あるんだこいつ。

 なるほど。騎士道精神までは失っていないから、女子供を護りたい気持ちはまだ残っていると。真面目か? だからゲームでも、意思疎通できないのに主人公を助ける行動だけは一貫してたの? 良い奴じゃん。……そのせいで、ゲーム内のわたしチェルシーは何度か斬り捨てられてたけど。


「えー、もうちょい話してこうよー。エドッさんお笑いに興味ない?」

「……復讐か」

「違うけど」

「理解した。復讐に貴賎きせんべつはなし」

「違うって」


 前言撤回。

 頭復讐こいつ、普通に面白いね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る