6.「笑いは世界を救う……!?」

 前回までのあらすじ。

 ホラゲーのびっくり要員「這う女」は、なんと芸人魂の持ち主だった。


「だって面白くない? コレ。渾身こんしんのネタなんだけど」

「……知りませんでしたわ……」


 話が通じたことも驚きだし、ウケを狙っていたことも驚きだ。いや、確かに、ここがホラーな館でなければ多少は面白い……のかも、しれない……?


 ……そっか。「笑い」か。


 ふと、行き詰まっていた思考に光明こうみょうが差す。

 わたしにろくな未来が待ち受けていないのも、そもそもゲーム自体にハッピーエンドが存在しないのも、この世界が鬱ゲーと名高いホラーゲームの世界だから。……それなら!


「感謝いたしますわ。リナ」

「へ? なになに?」


 世界観ごと、作り替えてしまえばいい。

 この「呪われた館」を、祝福に満ちた、笑いの絶えない館に変えてしまえば、自ずとハッピーエンドは見えてくる……!


「わたくしと……手を組みませんこと?」

「おっ、マジで? じゃあアタシがツッコミ?」

「……それはツッコミ待ちですの?」


 色々と懸念材料はあるけれど、目指せハッピーライフ! ……生きてないけど!


「イイよイイよ! アタシ、ボケも全然できちゃう!」

「ツッコミがいないと成立しないボケを延々えんえんと繰り返しておいて、何を言ってらっしゃるの?」


 そもそも、誰も笑わないネタを今までずーっと続けていたのだと思うと、メンタルの強さがおかしい。心臓が超合金で出来てるのかな?


「ともかく……方針は決まりましたわ。この館を笑いで満たしましょう」

「ヤッター! サイコーじゃん! 」


 この館が今より明るくなれば、そのうちゲームやアニメ鑑賞もできるようになるかもしれない。何ならカラオケルームも作れるかもしれない。

 そうなれば、悠々自適な死者生活……略して死活? も夢じゃない……!


「やってやりますわよ、リナ!」

「オッケー! 二人で笑いのてっぺん取っちゃお、チェリー!」

「……。わたくしはチェルシーですわ」

「チェリー、可愛くない? 愛称ってコトでどう? どう?」


 ……まあ、「レディ・ナイトメア」よりは「チェリー」のが可愛いし、それはそれで良いか。

 チェルシーの愛称でチェリー、別におかしくはないしね。うんうん。


「わかりましたわ、よろしくお願いいたします」

「イエーイ! チェルチェルよろしくぅ!」

「早速変わってますわよ、愛称」

「細かいことは気にしなーい!」


 う、ううーん、ちょっと心配になってきた。

 ……本当に大丈夫かなぁ……。

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