ラッキーナンバー7

藤堂 有

ラッキーナンバー7

『今日の占い、最下位は──蟹座のあなた!ラッキーナンバーは7!今日も頑張りましょー!』

 テレビの前で、少年はため息を漏らした。

 占いを信じていることが前提だが、自分と同じ蟹座の者は、このラッキーナンバー『7』を幸運の数字として今日一日過ごすのだろう。自分は、さてどうだろう。説明のしようのない嫌な予感に、少年は再びため息を漏らした。


 7月7日朝7時7分誕生したこの少年は『七星ななせ』と名付けられた。7に愛された男だと、七星の両親は大いに喜び、それから7という数字を何かと結びつけようとした。両親が幼少の七星に対し、ウルトラセブンへの玩具ばかりを買い与えたり、7に纏わるグッズを与えたり身に付けさせた。その結果、ウルトラマンに関しては若干どころではない同年代との知識のギャップを感じ、渾名は『ラッキー7』となっていた。七星は密かに涙を流したこともあるとかいないとか。


 占いを見たこの日、七星の身には様々なことが襲いかかった。

 数学では他にも生徒がいるのに何故か7回も当てられ、たまたますれ違った教師の使い走りを7度もさせられ、体育のドッジボールでは7回試合を行いそれぞれ1回ずつ豪速球をぶつけられ7か所あざができ、何もない平坦な廊下で7回躓いた。時間の経過とともに満身創痍になっていきながら、一日が早く終わってくれることを七星は祈った。下校時間になると急いで荷物をまとめ教室を出た。自転車と衝突しそうになったり、側溝に落ちたり、そんな目に6度遭いながらもやっと自宅が目前となったその時である。

七星の方へと吹っ飛んでくる車。

それはどんどん目の前に迫ってくるのに、七星の脚は咄嗟に動かず──





「────っ」

 見慣れた天井。部屋の空気。壁のアナログ時計は午前6時を示している。紛れもない七星の部屋だった。嫌な夢を見たものだ。汗で服が湿っており、額にも前髪が張り付いている。不快感に顔を顰めつつ、七星は部屋を出た。

 階下のリビングへ向かうと、七星の両親が朝食を作っているところだった。テレビのニュース番組が6時20分を知らせている。いっそシャワーを浴びてしまおうか。七星が思案するうちに、番組が占いのコーナーが始めた。

 とてつもない既視感デジャヴ

 七星は自分の身体から血の気が一気に引いていくのを感じた。



『今日の占い、最下位は──蟹座のあなた!ラッキーナンバーは7!今日も頑張りましょー!』

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