第2話 希望の存在
私は学校でも自由に話すことができない。なぜなら、親が父親が高校の教師で私のことを監視しているからだ。家でも学校でも自由がないならいっそのこと家に引きこもった方が楽なのだろう。
だが、そうしないのにももちろん理由がある。学校には彼がいるからだ。
「おはよ、天乃。」
「おはよう、
彼は同じ高校に通っている幼馴染の
私は輝と他愛もない話をしながら学校へ向かった。
「おはよう輝。今日も相変わらずお姫さんの護衛か?」
学校に着くと輝の友達の
「おはよう冬馬。そんなんじゃねぇよ。家が近いから一緒に登校してるだけ。」
「そうでした。お姫さんもおはよう。」
私は軽い会釈だけした。輝以外の人と話しているところをどこでお父さんが見ているかわからないからだ。
「じゃあ俺、職員室に行ってから教室に行くわ。」
「おう。」
早川君は大きく手を振りながら走っていった。
「朝から元気なやつだな。」
「もうすぐ、県大会があるから気合が入ってるんじゃない。」
「そうだったな。俺らも教室に行こうか。ここにいたら汗がびっしょりだ。」
「そうね。行きましょうか。」
私たちはクーラーの効いた教室へと向かった。教室にはほとんどのクラスメイトが来ており、それぞれのグループでだべっていた。
「おっ輝にお姫さんおはよう。」
「おはよう。」
「姫ちゃん、先導君おはよう。」
「おはよう。」
私はクラスのみんなから『姫』と呼ばれている。気になって輝に理由を聞いてもらったら『いつも輝の近くにいて守られているみたいだから』らしい。
「輝明~数学の宿題見せてくれよ。おまえだけが頼りなんだよ。」
「自分でやれよ。数学4限だろ。手伝ってやるから。」
「ありがとう輝明様。」
「あとでコーヒー奢れよ。」
そうこうしているうちにチャイムが鳴り、ホームルームの時間になった。私はここからほとんど言葉を発しない。クラスメイトとのコミュニケーションも軽い会釈や微笑みなどのリアクションだけにとどめる。普通、私のような人がクラスメイトがいたら無視するかいじめが起きてもおかしくないはずだ。実際に中学時代はほとんどの人に話しかけられたことがなかった。
高校でそれが起きてないのも輝のおかげだ。輝がクラスのみんなに私の事情を説明してくれてみんなが理解してくれたから何とかやっていけている。でも、全員が理解を示してくれたわけではない。輝みたいな人が人気がないわけがなく、輝に思いを寄せている子には妬まれている。
それでも私は学校に行く。将来後悔しないようにするためもあるが、何より学校に行けば輝に会えるからだ。こんな幸せとは程遠い生活の中での生きる理由であり拠り所だから。
「天乃。次、移動教室だから行こうぜ。」
「うん。」
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