何故かうちの店が異世界に繋がっちまったんだが
@hen_na_tai
時間外の来訪者
「ありがとうございましたー」
カランとドアベルが鳴り、客が帰った。
ここはコンビニだ。だが客は人間だけではないが。
家業でやっていた酒屋を改装し、コンビニにした。
まぁ、よくある話だと思う。
酒屋だけじゃやっていけないしね。浅く広くやればその分収入も増えるだろうし。
ただ、有名どころのコンビニではない。
いわゆる『超ローカル』なコンビニであった。
店の看板には「マイショップたかはし」という名前が刻まれていた。
店の名前に自分ちの名前つけちゃダメじゃね?と以前聞いた事があるのだが、その時はカネがかかるだの何だのと言っていた。
で、その超ローカルな店のラインナップはまずは酒。
酒屋だったコネを最大限に活かしてそんじょそこらで売ってないレベルの酒を扱っている。
これが店の売り上げの殆どだな。
まぁ運が良い事に近所に酒好きな家が多くて、飲み屋もそこそこあるからそういった所からの注文が圧倒的に多い。
たまに噂を聞きつけた酒好きが県外から買いに来る事もある。
あとはクリーニングの受付。あくまで受付なだけで朝夕に集配が来るのでそのまま丸投げしてる。
うちの店は19時には閉店する。
大手じゃないし、そんな営業時間は長い必要がないし他に行けばいいだろう。
以前はそれで良かったんだけど。
ある日閉店後に何故かドアベルが鳴る音が聞こえた。
閉め忘れたはずがないんだがな・・・と思いながら店に向かうと客がいた。
「店主、ここは何の店だ?」とその客が聞いてくる。
「え?ここはコンビニですけど・・・?」
よく見るとその客は変わった格好をしていた。具体的に言うとRPGに出てきそうな服装、いや装備だな。
茶色い革の様な鎧に見えるモノ、下も同じ様な感じ。腰には剣の様なのが吊り下げられている。
「・・・コンビニ?」
「失礼、えーと・・・・・・食品と酒が主な雑貨屋といったとこですかね」
酒と言ったところで顔をこちらに向けてくる。
「何ッ?酒だと?何が、何がおいてあるんだッ!?」
何でそこまで食いついてくるんだろうか・・・。
「えーと、ぶどう等から作るワイン、穀物から作る日本酒、エールのようなビール、麦から作るウィスキー等沢山ありま『エールをくれッ!!』」
そんな酒飲みたいのかこの人は?
「・・・はい、どうぞ」
手渡すも「何だこれは?」とすぐに突き返される。
あぁ、そうか。『缶』を知らないんだな。
受け取り、プルリングを開け再び渡す。
「では・・・・・・・・何だコレはッ!!?」
もういちいち煩い人だなぁ。
「これはビールという物で製法はエールに似たシロモノです。原料は同じですが他にも色々違いはあるでしょうが」
冷たかった事にビックリしているのかなぁ?
他の酒も飲んだが大体同じ様な反応だった。
ちゃんぽんしていたので、酔いもだいぶ回っている様でところどころ何を言っているのか解らない部分もでてきた。
「うぅ・・・・・・飲み過ぎた。そろそろ帰るわ」
「はい。えーと、4500円ですねー」
「ん?4500円?なんだそれ?」
あーやっぱり。何となくそんな予感はしてたけどさ。
「それなら・・・・・・あなたの持ってるお金で支払ってください」
多少誤魔化されても仕方ないよなー。そうなったら・・・・・・まぁ、いいや別に。
「んーそうか。じゃあこれで」
銀貨かな?それを5枚出してきた。
正直なところ多いのか少ないのか判断つかない。
もし、この銀貨が1枚1000円扱いであればほぼ妥当な線か。半端分は冷えてた事に関してのチップとでも解釈できるな。
「はい、ありがとうございます」
とりあえず受け取る。
「じゃあ、また来るよ」言いながらドアを開けて店から出ていく。
「あ、はい。ありがとうございました」
条件反射で答えてしまったが、店は閉店中で施錠してある・・・・はず。いや、シャッター閉めたし。
カランカラン
ドアベルの音が静かな店内に響く。
慌てて外に行ってみるが、さっきの客の姿はどこにも見当たらなかった。
ですよねー。あんな恰好でそこら歩いていたらソッコーで警察呼ばれるわな。
するってぇと、何かい。
あの『店の入口』がどこか違う場所と繋がってしまった、という解釈なんだろうか。
しかし何故言葉が通じた?全く違和感なく会話していたが・・・。
とりあえず、シャッター閉めた状態で店内から外に・・・・・・ムリだなやっぱり。
構造上の問題で動いても外側に数センチ程度しか動かない。まぁこれが普通だろう。
それと銀貨らしきモノ。
色々と模様が刻印されているが、読めないので理解出来ない。
まぁ多分銀貨なんだろう。そういう事にしておく。
しかし、さっきの人はどこから来たんだろうか?
まさかねぇ・・・。
何故かうちの店が異世界に繋がっちまったんだが @hen_na_tai
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