主観と俯瞰

仲村 嘉高

ラッキースケベ




 俺は、朝からついていた。

 満員電車で前に立っていた女性が、とても巨乳だった。

 しかも混んでいるから、その女性は電車が揺れる度に俺に胸を押し付けてくる。

「すみません」

 女性が申し訳なさそうに俺に謝る。

「いえ」

 感情が籠らないように答えたけど、俺は内心でウハウハだった。


 電車を降りていつもはエスカレーターに乗るところを、今日は階段にした。

「きゃっ!」

 階段の上から声がしたから、何の気なしに顔を上げる。

 俺の居る段の2段上に定期入れが落ちて来た。

 親切心で拾ってやり顔を上げる。

 決してわざとでは無い。

 ただ女子高生のスカートが予想以上に短くて、運くホームに入って来た電車の風に煽られて、少しふわりと膨らんだだけだ。

 ピンクだった。


 駅から大学に歩いてる途中、角から出て来た女性とぶつかり、倒れそうになった女性を慌てて支えた。

 その時に咄嗟に支えた部位が、胸だっただけだ。

「す、すみません!」

 俺が謝ると、女性は「いいえ」と笑って許してくれた。


 いつものように講義を受けに教室に入ると、なぜか混み混みだった。

 空いている席がない。

 臨時講師が人気者で、講義を取っていない生徒も居るようだ。

 授業が始まっても立ったままの俺に気付いた講師が、前の方で陣取っている派手な集団に席を詰めるように言う。

「ほら、ここに座って」

 講師に言われて席に着く。

 五人席に六人座ったから、隣の女生徒と密着する事になった。

 良い匂いだった。


 お昼を食べようと食堂に向かっていたら、横から悲鳴が聞こえた。

 ホンの3段だけど、踏み外した女子生徒が降って来た。

 受け止めた……けど、無理だった。

 倒れた俺の上に女子生徒も倒れ込む。

 俺の顔は、柔らかいものに埋まっていた。

 俺は乳に挟まれて息が出来ないという幸せな体験を、生まれて初めてした。


 食堂から次の講義の教室へ移動中、同じ講座を取っている女子が重そうに本を運んでいたので声を掛けた。

 手伝って欲しいと言われたので、上から数冊取ろうと本と彼女の間に手を差し入れたら、胸元の開いた服だったので、服の中に手が入ってしまった。

 手の甲ではあるが、ブラジャーからはみ出した生乳なまちちに触れてしまった。



「何かお前、今日はラッキースケベ多くないか?」

 友人に言われた。

 確かに。

 俺は電車の中の出来事から今までの話をした。

「すげぇな!後1個でラッキーセブンだな!」

 ラッキーセブンか。

 凄く良い事が起こりそうだよな。



 全ての授業を受け終わり、帰る準備をして教室を出ようと……肩掛け鞄が机に引っ掛かって、変につんのめってしまった。

 バランスを崩した先に居たのは、入学当初から憧れている女子だった。


 バランスを崩して、憧れの彼女を巻き込み、抱きつくようにして倒れてしまい…………。


 尻もちをついた彼女の股の間に、俺は倒れていた。

 俺の手は彼女の尻を鷲掴み、足を広げた彼女の股間に顔を埋めていたのだ。


 彼女のミニスカートはめくれていて、俺は白いパンツのレースを肌に感じていた。


「この!変態!!」

 恐ろしい程の力で、頬を殴られていた。

 平手じゃなくグーパンで。



 俺は翌日から、変態認定された。

 服に手を入れられたとか、胸に顔を埋められたとか。

 通学中のラッキースケベを目撃した生徒も居たようで、全部晒された。


 事故なのに…………俺のラッキースケベは、ラッキーセブンじゃなくて、アンラッキーセブンだった。



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主観と俯瞰 仲村 嘉高 @y_nakamura

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