第3話 休み時間

 校庭であかりはすぐに自分の母親を見つけることができた。昔見せてもらった卒業アルバムの姿そのままだ。


どうやら友達と鬼ごっこをしているようだった。校庭に面する体育館側面の植木から、注意深く様子をうかがっている。


「あの…。」


突然声をかけられた母親は少し驚いたようだが、あかりにきちんと向き合った。勢いで声をかけてしまったが、なんと言えばいいのかわからない。母親は不思議そうにあかりを見ている。


「どうしたの?何年生?」

「えっと…5年生!一緒に遊びたくて…。」


思わず学年を偽った上に、自分の見つけたいこととは全く関係のないことを言ってしまった。あかりは心の中で自分に鉄拳をお見舞いした。


「いいよ!私菜々美(ななみ)。あなたは?」

「私は…あかり。」


嘘の名前はとっさに思いつかず、本当の名前を伝えた。菜々美ということは、やはり母親で間違いない。母親は少し不思議そうな顔をしていたが、すぐに笑顔で答えた。


「あかりちゃんね!今途中だから、とりあえず私と同じ泥棒側で入ってもらっていいと思う。」


どろけいをしていたのか、とあかりはここで気付いた。警察から隠れていられる今の状況なら、少し話ができそうだ。


「あの…菜々美ちゃん?」

「何?」


子供の姿とはいえ、自分の母親をちゃん付けで呼ぶのは不思議な感じがした。あかりが次の言葉を言う前に菜々美は笑顔で叫んだ。


「警察が来た!逃げよ!!」


警察に追いかけられて話どころではなくなってしまった。結局、泥棒はみんな捕まってしまい、警察側の勝利となった。第二回戦を行う前に、菜々美はあかりを一緒に遊んでいる6年生に紹介した。あかりが遊びに参加することには反対しなかったが、何人かは首を傾げた。


「5年生…なんだか菜々美に雰囲気にてるね。」

「なんでわざわざ私たちと?」

「どろけいがしたかったんじゃない?5年生今みんな大縄かドッジボールやってるっぽいから。」


最後の言葉にあかりは大きく頷いた。そういうことにしてもらおう。


結局、休み時間の間に母親とゆっくり話すことはできなかった。


「どうするのさ。授業時間はさすがに君のお母さんとは一緒にいられないでしょ。」


かえる様はやや不安気な様子で聞いてきた。あかりはほとんど口を動かさないで答えた。


「昼休みになったら、今度こそ聞いてみるよ。それまでこっそり色々学校内を探る。だから、さっき言ってた見えなくできるっていうの、やってもらえる?」


かえる様はケロケロと鳴いて頷いた。

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