第18話:武闘派聖女?

「ウィリアンさぁぁん。これどうなってるのぉ?」


 ゴブリンを探して山をうろつく間も、私はずーっと光りっぱなし。

 しかも遠目からも光は見えているようで、次々に他のグループと出会っては驚かれている始末。


 もう……もう恥ずかしいっ。


「うぅん。光の感じからすると、ライトのはずなんだけどねぇ」

「えぇ!? ライトって普通は光球を浮かべて周りと照らす魔法でしょう。なんで私が光ってんの?」

「あっはっは。何故だろうねぇ。ただライトが発動した瞬間に、ゴブリンを殴っていたのは確かだよ」

「殴ると魔法、というのはこの事なのですか?」

「どうやらセシリアは、武闘派のようだねぇ」


 武闘派?


「おぉ、聖女様が光り輝いておられるぞっ」


 あぁ、また別のグループの人が来た。


「本当だ。眼福眼福」

「ひぃーっ。もうヤダ恥ずかしい。これいつになったら消えるのぉ」

「ライトは三十分ぐらいで消えるんだけど、どうだろうねぇ」


 嫌だぁ、一分一秒でも早く消えてくれぇ。






 ゴブリンが山の方へ逃げて行った――という報告を聞いて、私たちは町へと引き返した。

 幸い体の光は三十分ほどで消え、安心して町に戻ることが……。


「聖女様っ。あぁ、何故光っておられないのですかっ」

「私も見て見たかった」

「姉ちゃんピッカピカだったのぉ?」


 ううぅぅ、嫌だぁ。もうそこら中で噂になってんじゃんっ。


 はっ!

 もしかしてアレをアディに見られたりしてない?


 アディ。アディいる?

 いない?

 見てないよね?

 見られてないよね?


 あぁ、兵士の人に笑われてる。

 ああぁぁ、嫌だあぁぁぁーっ。


 アディに見られていたら、絶対あの人みたいに大笑いされるんだきっと。


「セシリア、疲れただろう?」

「え? ううん、全然。恥ずかしかっただけ」

「本当にお前は体力が有り余っているねぇ」

「へへへ。それが取り柄ですから」


 兵士はこの後も警戒に当たるらしい。


「お疲れ様です。頑張ってね」


 と、一緒にゴブリン退治をしていた兵士の肩を叩いた。

 そしたら叩いた所から、キラキラとした緑色の光が跳ねた。


「おぉ、聖女様。ご加護をありがとうございます」

「す、凄い。これが聖女様の加護の力か」

「力が湧いてくるようだ。疲れも全部吹き飛んだぞ」


 ん? んん?


「ウィリアンさぁん」

「あっはっは。絶好調じゃないかセシリア。まぁそのことも含めて、教会でゆっくり話をしようか」

「うぅぅ」


 教会に戻ると、神官は慌てて紅茶を入れてくれたりする。

 お菓子も出てきた。嬉しい。


「んあぁー、疲れた時にはお菓子に限るねぇ」

「疲れていないんじゃなかったのかい?」

「お菓子美味しい」


 砂糖増しましの紅茶を一口飲んだら、焼き菓子を頬張る。

 あぁ、なんて幸せなんだろう。


「それでウィリアンさん、どうなってんの私!」

「うん。まずはねセシリア、確認しておきたいんだけどね。お前、兵士の方が怪我をしたとき、どう思った?」

「どうって……えぇっと、私が怪我を治せたらいいのにとか、みんなの力になれなくて悔しいとか、そんなこと?」

「体が光った時は、明かりが欲しいって言ってたね」

「そのせいで光ったとかなら、私もう二度と明かりが欲しいって言わないよ」


 でもまさか……それで?

 えぇー?


「前に話したね。神聖魔法っていうのは、神の奇跡の力だって」

「うん。その力を何のために使うのか、それが大事なんでしょ?」

「そうだよ。なんのために使うのか、もう分かっているだろう」


 何のために……誰かの助けに、なるためだよね。


「それとね、気持ちも大事なんだよ」

「気持ち?」

「そう。こうしたい、ああしたいという気持ちがね。今日のセシリアは、魔法のことばかり考えていただろう?」

「うん。だって殴ったら魔法が使えるのか、知りたかったし」


 でも人を助けるための力に対して、魔法が使いたいから! じゃ、使えるわけもないか。

 普通の神官たちは、その気持ちをしっかり意識するために祈りを捧げる。つまり詠唱ね。

 でも私は――


「なんで私はウィリアンさんたちみたいに、祈りの言葉で魔法がぁってならないの?」

「うぅん。まぁそれ自体はどうしてなのかわたしにも分からないけどね、お前みたいな魔法の使い方をする神官戦士はいるんだよ」

「え、いるの!?」

「稀だけどね。というか、武術を極めた神官戦士だけが習得できるらしいんだけどねぇ」


 ぶ、武術を極めた神官戦士だけが!?

 ちょっとカッコいいい!


「なんて言ったかなぁ。闘気だっけ? それと祈りを込めて、相手に打ちこむとかなんとか」

「はわぁぁ、カッコいぃ」

「そ、そうなのかい? まぁとにかく、お前の魔法のことは分かったし、これからは無意識じゃなく、意識して使えるように修行なさい」

「うん! 組手いっぱいするねっ。だから勉強の時間は――」

「それはそれ、これはこれ。両立させなさい」


 ……うえぇぇーっ。

 むぅーりぃー!!

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