7に呪われた男
白ごじ
第1話
「俺は今日死ぬかもしれない」
「はぁ?」
遠藤が言い出したのは突然だった。
会社の食堂裏の自販機が、『当たりのおまけでもう一本! 30秒以内に選んでください』と音声メッセージを流していた。
遠藤は震える指で自販機の金額表示の部分を指さす。
7777。
横から見ても上から見ても、まごうこと無く7777。
「7777……悪魔の数字だ。俺は死ぬ」
「頭でも打ったか?」
「あれは今からちょうど7年前……」
「その話し長くなる? なら、もう一本先に選んでやれよ。さっきから自販機が選べアピールしてるぞ」
「お前にやる。これを選んだら俺はきっと死ぬ」
「そっか。そりゃ大変だわー」
俺は遠藤と同じ缶コーヒーを選んだ。
ギリギリ30秒以内だったようで、無事に自販機の中にもう1本落ちる音が聞こえた。
「で、死ぬって何?」
「俺は7に呪われているんだ。7年前……俺は17歳……3月7日……俺は卒業する先輩に告白した。モテモテの先輩だったから、俺は7番目だった。俺は玉砕した! 告白成就したのは俺の直後の8番目ぇ! おのれ、末広がりィィィ!」
「いやそれ先輩の気になっている奴がたまたま8番だっただけで、お前が8番だったとしても成就したというのは暴論じゃね?」
「うるせー! 夢くらい見させろォ! それだけじゃねえ、忘れもしない、俺の大学受験番号。まさかの777番だ、周り中が絶対受かると言ったさ! だが!」
「あー、ドンマイ」
「初めて出来た彼女にフラれたのは何月何日だと思う!?」
「7月7日?」
「七夕なんて厄日だァァァァ!」
「遠藤、吉田。そろそろ良いか……?」
「うわ、部長!」
「すんません、すぐどきます!」
話し込むのに夢中で、後ろに立っていた人に気づかなかった。
自販機から当たり缶を取り出し、俺たちは急いで自販機から離れる。
「部長に迷惑をかけてしまった。やっぱり俺は7に呪われて……?」
「んなわけあるかい。たまたまだよ、たまたま──うっ!? げほごほ!」
当たり缶を飲んだ瞬間に予想外の味に襲われた。
吹き出しそうになったのを堪えたせいで酷く咳き込む。
「よ、吉田ー!?どうした、まさか本当に毒がっ!?」
俺は無言で飲んでいた缶を遠藤に見せる。
おしるこ。そう、おしるこである。
つめたーいから出た、おしるこだ。
「俺も買ったけど普通にコーヒーだったぞ」
「げほ、あー……じゃあこれだけ混ざってたんだろうな」
「……俺が7777で当たりを引いたピンポイントで?」
「すまん、俺が間違えていたみたいだ。遠藤、お前やっぱ7に呪われてるわ」
後日、遠藤は滅茶苦茶気合いを入れてお祓いに行ったらしい。
7に呪われた男 白ごじ @shirogoji
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