第46話

「フィルを逃すぞ」


 どうして俺だけ?何を言っているんだ?ダックスさんは全員で助かるために俺を助けてくれたのにも俺は心底疑問に思った。


「どうしてですか?俺とあなたはどうするんですか」


 ごもっともだ。こんないざって時に何も出来ないでただ立っているだけの人間より二人が生き残ってくれた方がこの先の未来に良いだろう。


 「あなたは生きたくないんですか、」


 ランの問いかけに


 「生きたいに決まってるだろ、、、俺だって人間なんだ、でもなもう俺たちは死んでるんだよ」


 「は?え?」


 先輩はダックスさんの言っている事に疑問を抱いていた。俺もだ、まだ二人は生きているじゃないか、、、


「全員が助かる方法が何かあると思います。それを戦いながら探しましょう」


 それならさっきヴェンが言った言葉がヒントになるだろう。恐らくヴェンの狙いはフィルだ。それは3人とも理解している。しかしそれでは確実にフィルは死ぬだろう。だからダックスはこの選択肢は切った。


 しかし─────


「あ、あ、あの人は、お、お俺に用があるんですよね、なら俺が一人で行きます。なので二人はその間に逃げ───」


「出来ないだろ」


 ギクッ


 その通りだ。実際行ったは良いもののやる勇気はないし、心ではこの選択肢を無くして欲しくて言ったのだろう。

 俺はこんな状況でも何か言葉をかけて欲しかったんだろう。 情け無い、、、


「それじゃあ確実にお前は助からないだろう。それはダメだ俺は許さない」

 断固拒否された。

 

「ランちょっと来てくれるか」


 二人は敵に気をつけながら耳打ちする。


「俺たち2人はもう死んでいるのは分かるよなラン、、だから俺たちでフィルを───」


「何言ってるんですか俺もダックスさんもまだ死んでなんかいない。それともこんな状態の俺が生き残ってなんの意味があるのかって言うんですか」

 

 と言ってダックスを突き放す。

 ダックスは簡単に倒れる。

 そしてすぐに起き上がり、もう一度ランのそばに駆け寄る。

 

「頭の良いランなら分かるはずだ、、、こいつはポータルのボスではないんだよ」


「あ、」


 この瞬間にランは全てを理解した。もう死んでいると言う意味も、全部。


 


 そう、言わばこいつは所謂ユニークモンスターって所だ。ポータルには一才の関係性のない。存在つまりこいつを倒した所で何も起きない。

 

「分かったか?フィルがもしヴェンのところへ行って俺たちが逃げたとしても、ランは足、俺は腕と心臓が壊れてる。間違いなくポータルは閉鎖されてしまっている。つまりだ俺たちではこのポータルを脱出出来ない。」


「……………」


「分かってた、分かっていたんだそんな事くらいでも俺だって生きたいんだ、、、」


「じゃあお前も逃げてもいいぞ、俺一人でここは抑える。でもボス倒してからもう8分位は経ってる。片足が死んでるお前が2分でポータルにたどり着けるか?」


 ダックスはランにどうにか説得している。一人ではヴェンを止める事はできない、、だから何とか二人で一人を逃がしたい所だ。


「俺はここに残る。絶対に仲間を助ける!ランは自分の正しいと思う事をするんだ。」


「………くそっ! バチン」


 ランは自分の頬を両手で叩き自分を奮い立たせる。


「よし!」


 二人は覚悟を決めてヴェンの前に立つ。

 ダックスとランはもう覚悟を決めた。奇跡にかける

 その時もフィルはヴェンの目線に怯えている。


「おやおや、君たちは逃げないのかい?私に勝てる算段を見つけたのかい?フィル君は良い仲間を見つけたんだね。」


 ヴェンがフィルに何かを言っている。その言葉はフィルにはよく聞こえなかった。

 この時間にも刻一刻と閉鎖の時間は迫ってきている。

 早くしなければと思ったダックスが動く。


「フィル早く逃げろ!」


「で、でも、ダックスさんと先輩が、」


 フィルは自分の事以上に二人の心配をする。それは自分が今生き残っていても、この先、こんなんじゃ何も出来ない自分に生きる意味を感じなくなってしまっていた。


「俺が死ぬとでも思ってんのか?俺も下に見られたもんだ。俺達を信じてお前はひたすら逃げろ」


「俺もダックスさんもこいつを殺してからお前と一緒にここを出るから安心して逃げろ。」



 二人はフィルを安心させるようにヴェンを倒す、ここから脱出すると、嘘をついた。二人はわかっていたのに………


「わ、分かりました、、」


 フィルはヴェンから目を逸らし、足を一歩踏み出そうとする。その足はめちゃくちゃ重かった。


「ぐっ…うわあぁぁぁぁ」

  フィルは震える足に鞭を打ち走る。


「逃げるか、思い通りにはさせないよ 真光線メカスパーク」


逃げるフィルに向かい追い討ちをかける。


「お前の相手は俺だって、、言ってんだろうがぁぁ!」


「肉体破壊リミットブレイク速度強化スピードモード」


 ランが全ての力を足に込める。

 ダックスが盾で守る。

 が、その盾は攻撃を受けすぎたせいでついに壊れてしまった。


「あっ、、」


「気にすんな早く逃げろ!こっちをみんな」


「今の俺は過去最高に調子が良い。安心して逃げろ」


「、、、、、はい!」


 俺はここで逃げてしまう。この行動を公開するのはもう少し先のことだ



 『技紹介』


 肉体破壊リミットブレイク

 

 一時的に特定の能力を下げることで一部の能力を上げることができる。 (上限あり。)


 筋力特化パワーモード

 速度特化スピードモード

 体力特化スタミナモード

 知力特化ウィズモードの4種類がある

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る