第36話

 「核突天掌」


 リューの活躍で一体のヴォールザムスを倒すことが出来た。何が起きたんだ?


 「あと一体です。」


 「あ、ああ」

 リューの攻撃に俺は戸惑いを隠せない。

何より何故そんな大技を今まで使わなかったんだ?俺はそこに疑問を感じる。

 すると───


「はあはあ、、」


 リューの息遣いがかなり荒くなっている。

 恐らくあの一撃には相当な集中力と体力を必要とする渾身の攻撃なんだろう。


「大丈夫か?俺が攻撃を防ぐ!お前はちょっと休め」


 俺は疲れているリューに駆け寄り盾で体を隠す。

 しかし、ヴォールザムスはそんな俺たちの事を待ってはくれない。俺の盾に炎が通じないと学習して、今度は接近戦に持ち込んで来る。俺はその攻撃を何とか、盾で防ごうとするもそれを予測したかのように寸前で攻撃をやめ、疲れているリューに奴の強靭な爪を向ける。


・・・間に合わねえ


 この時俺は自分の身の安全なんか完全に捨て、身を挺して、リューを守る。


グサッッ


「うおおぉぉっ」


「だ、大丈夫ですか、」

「ああ、問題ねえ」


 幸い破格は切り裂かれなかったもが腹に激痛が走る──


「それより、早く立ってくれ!リュー!」


 俺たちの生き残る術はリューがこいつを倒すしか残されてないと思っていた。

 しかしリューは俺にとんでもないことを言った。


「剣を握って下さい。ダックスさん剣を」


 どうしてだ、俺の攻撃なんかでは余裕で防がれるに決まってる。なのに剣を持つなんて死ねって言っているのか?

俺はそこでリューの言葉を無視する。

 

「剣を握れ!ダックス!俺の言う事を信じろ!!!」



「!!!!」

 俺はこの時、初めてリューの攻撃を見た時と同じ感覚を受けた。

 こいつになら俺は信じることができる。

 こいつになら俺の全てを賭けてもいいと、


「変形」


 俺はすぐに両剣に切り替える。

そしてリューは呼吸を整えて、俺の横に立ち、


「攻めは最大の防御って言いますよね、ここは攻めどきなんです!」


 と言ってリューは炎の攻撃が出しにくい接近戦に持ち込む。

 するとヴォールザムスも爪に炎をまとい、接近戦上等だ。炎をまとう爪を一度でも食らうとゲームオーバーだ。

 そんな嫌な予感は俺も感じる。


 リューも爪の脅威は感じ取っている。

 しかし、ヴォールザムスの射程内に入って交戦している。

おかしい。間違いなく爪の攻撃をくらったら生存することが難しくなると言うのはリューレベルなら分かっているはずだ。なのにあえて危険な状況にいる。なにかアイデアがあるのかと考えていると、


「はあっ」


 リューが危険を顧みず上段蹴りをする。

、その攻撃は難なく躱される。そして大技を繰り出した後のほんの少しの隙をヴォールザムスは見逃さなかった。

 

 グアァァァァ


 まずい、やられる。




─────ニヤッ


 リューは俺の事を見て笑みを浮かべる。

それはまさにこの瞬間を狙っていたかのように、


 リューが俺に向かって指示を出す。

 俺はリューの笑みを見て全てを察した。


「殺れ」


「おお!」


 ヴォールザムスも確実に殺せるであろうリューの事だけに集中し過ぎていた。その瞬間をリューは狙っていた。そして、俺も瞬時に狙いをリューから受け取る。


俺はヴォールザムスの真後ろから斬りかかる。

グオォォォ


 ヴォールザムスは咄嵯に振り向くが、もう遅い。

俺が全力で放った一撃はヴォールザムスを真っ二つに斬る。


 ドオオォォン!!


「た、倒した」


 ドサッ

二人は同時に倒れ込んだ。


 ふーーーっ。


「やりましたね。」

「ああ ありがとうな」


 二人は倒れ込む。

 辺りにはもうモンスターはいなさそうだ。しかしヴォールザムスはポータルボスモンスターでは無かった。だからまだ任務は終わっていない。

 リューは立ち上がって、ボスの捜索に向かう。


その時─────


「何寝てるんだ?終わったぞ閉鎖するぞー」


 リーダーの声が聞こえる。


「終わったって」


 ボスが倒されたのか?と疑問だが、リーダーが一人で倒したんだそう。とにかくポータルはもう封鎖されるから、撤退をする。


 ポータルが封鎖される。

「こ、これで全員?」


 始めにいた35人程のメンバーはリーダーしかいなかった。恐らくヴォールザムスの急襲でほぼの隊員は死んでしまったんだろう。そう考えれば俺たちは十分頑張った。


「よく生き残ったなお前達何者だ?」


 とリーダーが俺等に話しかける。


「俺はリューニス=フリートって言います。」

「ダックス・サラムゾーです」


「おー君が噂のリュー君か、流石だね。それにダックス君もよく頑張ったなあ、聞いた事はない名前だね。出身は?どこの所属?」


「あ、所属はありません…トラスト区出身です」


 俺は所属がないことが少し恥ずかしかった。さらに最弱都市出身であることも、


「君もトラスト区出身なのか、じゃあリュー君とギルドを作るといいよ。リュー君も所属はどこにもしてないしね。」


「え?」


 俺とリューがチームを?

 ありえないありえない俺みたいなクローシスの底辺と期待の隊員がチームを組むなんて、俺にとっちゃ願ってもない話だが、リューがいいわけないだろう。

 と思っていたが、リューが言ったことはあまりにも意外な言葉だった。


「いいですね。チーム作りませんか?俺たち二人の」


 願ってもない話だ。本部から離れられるしなんたってまたリューと仕事が出来る。こんな嬉しいことはない!


「よろしく!!」

「よろしくお願いします。」


「ハッハッハ じゃあ俺は先に帰らせていただくぞこれからも頑張るんだな」


 行ってしまう。せめて名前でも


「すいません。名前を教えてもらえないでしょうか、」


 俺の人生を変えてくれたもう一人の恩人だ。名前を聞かないなんて無礼なことはしない。


「トラウゴット=アレクだ。よろしくなダックス君」

と言って先に帰ってしまった。


………


「改めてよろしくお願いしますダックスさん。」

「よろしくな、リュー」


こうして、リューニス=フリートとダックス・サラムゾーの二人によってDYギルド(現DAクラン)が誕生した。

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