第34話

「ゴォォォ」


 ヴォールザムスが攻撃の体制に入る。すると急に暑くなって来た。


「ブォォッ」


 奴の手から炎が飛んでくる。その攻撃を俺は避けきれないしかし、炎を食らう覚悟をした俺は目を閉じる───



 「あれ?熱くない?」


 熱さは感じなかった。目を開けると前には火傷を負ったリューがいた。

 

 「大丈夫ですか?」


 間違いなく大丈夫では無いが、聞いてみると大丈夫と言って、再び立ち上がる。

 リューもヴォールザムスと戦うのは初めてで、さらに炎による遠距離の攻撃を持っており、リューは間合いに入ることすら難しく、圧倒的に不利状況だ。


 ブォォ


 手から火の玉が俺に向かって飛んで来る。リューと戦っているのに俺を相手する余裕まである。

 その攻撃を俺はバリアで防ごうとするも、俺のバリアは奴の炎に容易く燃やされる。


 「動け!自分の為に!!」


 歳下のリューの叫び声が聞こえる。その声で俺は目覚める。今のダックスは昔のフィルと同じで目の前の大きな存在に怯えている情け無い人間だ。

 それをリューの一言で完全に迷いを消し去る事ができた。

そしてダックスも両剣を再び握る。


ふーーーっ。


「うおおおお」


 俺は後ろにいるが突撃して一気に斬りかかる。

しかしその攻撃はあっさりと後ろ跳びで躱されてしまう。


グアァァッ


 躱すと同時に攻撃を出す。

恐ろしく完璧な動きで、俺は避けようとするものの、避けきれない────



 しかし三度、リューが俺を掴んで攻撃を回避する。

 そして一旦引く。


「大丈夫ですか?熱くないですか?」


 俺より重症なのに他人のさらに歳上の俺に気を使えるどこまで完璧な人なんだ。

 そこで俺はリューに話しかける。


「俺を使ってくれ、お前になら俺の命を賭けてもいい!」


 今まで高かった俺のプライドを全て捨て、この状況において最善のである、プライドを捨てるという事をした。




 この選択は自身にとって屈辱的なことだろう。これまでやって来た全てが簡単に上手くいって、クローシスにも入れてこれから将来安泰だと信じていた。

 しかし実際に入ると周りは俺よりも数倍強く、俺よりも何十倍も努力をしている。俺は自分は天才だと持て囃されていたせいで、努力を知らなかった。

 任務でもリーダーとぶつかる事もあった。

            (そのリーダーは勿論属性持ち)

 そして俺は属性のせいにして、自分の事は何も悪くないと思ってしまっていた。


 だが、今、目の前にいる少年には属性はあるか?いや、無い!自分には才能属性が無いからってある奴にただ屈するのでは無く、己の出来る事を最大限に活かす努力をして来たのだろう。

 その時に俺はリューへの尊敬と自分の愚かさに気づく。


「俺を扱ってくれ、お前になら俺の命を預けてもいい!」


 ここでもプライドを捨てきれてなかったが初めて俺は自分の弱さに気づく事ができた。


「分かりました。じゃあ僕の前で攻撃を防いで下さい。」


「守るのか、」


「そうです。貴方の両剣恐らくですが、変形型のものです。」


 人生で初めて守りに入る。俺も入ってからずっとこの武器を愛用していたが守備型シールドタイプにした事は一度も無かった。

 俺は守る事などしなかった人間だ。しかし俺には選択肢は無かった。


 「シールドモード」


 と言うと俺の両剣は大きな盾へと変形する。


──────

戦士の盾ウォリシールド


 耐久性が優れており防御力が大幅に上昇。

 属性耐性+2の補正値

──────


 「属性耐性だと!?」


俺はこの時に属性耐性がつく事に驚いた。


 「これなら俺も護れますね!」


 「ああ!俺に任せとけ!!!」


 二人は仁王立ちしているヴォールザムスの所に向かう

 

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